文在寅政府の医療政策「文在寅ケア」は成功しただろうか?

2020年02月06日

(金 明中) 社会保障全般・財源

■要旨
  • 2018年から、文在寅政府の「健康保険の保障性強化対策」、いわゆる文在寅ケアが実施された。この対策は、文在寅大統領の選挙公約の一つで、国民の医療費負担を減らし、医療に対するセーフティネットを強化することを目的にしている。
     
  • 文在寅ケアの主な内容としては、(1)健康保険が適用されていない3大保険外診療を含めた保険外診療の段階的な保険適用、(2)脆弱階層の自己負担軽減、低所得層の自己負担上限額の引き下げ、(3)災難的医療費支出に対する支援事業の制度化及び対象者の拡大などが挙げられる。
     
  • 「文在寅ケア」の最も評価できる部分は、保険外診療であったCTやMRI等が段階的に保険適用されることにより、国民の自己負担が減ったことである。
     
  • 「文在寅ケア」の最大の課題は財政負担急増により財政が悪化する恐れがあることである。保障率を上げるために国からの財源投入は避けられないものの、増え続ける財源をどこから確保するのかに関する議論が十分ではないことは問題であるだろう。
     
  • 「文在寅ケア」の実施がモラルハザードによる医療サービスの需要増加に繋がらないようにするためには、外来診療によって患者の医療を担当する1次医療機関の役割を強化するなど医療機関の役割分担を迅速に推進する必要がある。

■目次

・2018年から「文在寅ケア」を実施
・「文在寅ケア」の主な内容は?
・「文在寅ケア」に対する評価は?

生活研究部   上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任

金 明中(きむ みょんじゅん)

研究領域:社会保障制度

研究・専門分野
高齢者雇用、不安定労働、働き方改革、貧困・格差、日韓社会政策比較、日韓経済比較、人的資源管理、基礎統計

経歴

プロフィール
【職歴】
独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年9月ニッセイ基礎研究所へ、2023年7月から現職

・2011年~ 日本女子大学非常勤講師
・2015年~ 日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員
・2021年~ 横浜市立大学非常勤講師
・2021年~ 専修大学非常勤講師
・2021年~ 日本大学非常勤講師
・2022年~ 亜細亜大学都市創造学部特任准教授
・2022年~ 慶應義塾大学非常勤講師
・2024年~ 関東学院大学非常勤講師

・2019年  労働政策研究会議準備委員会準備委員
       東アジア経済経営学会理事
・2021年  第36回韓日経済経営国際学術大会準備委員会準備委員

【加入団体等】
・日本経済学会
・日本労務学会
・社会政策学会
・日本労使関係研究協会
・東アジア経済経営学会
・現代韓国朝鮮学会
・韓国人事管理学会
・博士(慶應義塾大学、商学)

レポートについてお問い合わせ
(取材・講演依頼)