一方、課税品目について、品目別の価格転嫁率を確認すると、転嫁率が150%以上の品目が27%(14年4月は23%)、100~150%の品目が28%(14年4月は28%)、50~100%の品目が17%(14年4月は24%)、50%未満の品目が28%(14年4月は25%)であった。上昇率の変化幅が消費税率引き上げ分と同じかそれ以上となった品目の割合は前回増税時を上回った。
価格転嫁率が100%以上の品目の割合が前回増税時を上回ったにもかかわらず、課税品目全体の上昇率の拡大幅が消費税率引き上げ分を下回ったのは、既往の原油安の影響でガソリン、灯油の上昇率が税抜き価格で下がったこと、課税品目である家庭用耐久財の上昇率が税込み価格で9月の前年比10.7%から同4.9%へと大きく縮小したことなどによる。
前回の消費増税時には、政府は消費税の転嫁拒否や消費税分を値引きする等の宣伝・広告を禁止することによって、円滑な価格転嫁を促進することに軸足を置いていた。今回は税率引き上げの日に一律一斉に税込価格の引き上げが行われないようにすることで、駆け込み需要と反動減を抑制することを目的として、「消費税還元セール」など、消費税と直接関連した宣伝・広告は禁止する一方で、事業者の価格設定のタイミングや値引きセールなどの宣伝・広告自体を規制するものではないことを強調するなど、企業に柔軟な価格設定を認めていた。
実際には、転嫁率が100%を超える品目の割合は前回増税時を若干上回る一方、価格転嫁率が50%未満の品目の割合も前回増税時より多かった。このことは、税込み価格を据え置くことで実質的に値下げした品目と、消費税率引き上げ時に税込み価格から税抜き価格に切り替えることで実質的な値上げをした品目が混在していることを示唆する。
非課税品目(9月:前年比0.3%→10月:同▲1.1%)、経過措置品目(9月:前年比▲1.0%→10月:同▲1.7%)、軽減税率対象品目(9月:前年比1.3%→10月:同1.3%)は、消費税率引き上げの影響を受けていない。
非課税品目の上昇率が大きく低下したのは、幼児教育無償化対象の幼稚園保育料(公立)の価格がゼロとなったことに加え、幼稚園保育料(私立)が前年比▲88.3%、保育所保育料が前年比▲57.1%の大幅下落となったためである。幼児教育無償化によるコアCPI上昇率への寄与度は当初の想定通り▲0.6%ポイントであった。一方、火災・地震保険料の値上げ(9月:前年比2.1%→10月:同14.8%)が非課税品目の上昇率を押し上げた。
経過措置品目については、原油安の影響で電気代(9月:前年比0.4%→10月:同▲1.2%)、都市ガス代(9月:前年比▲0.1%→10月:同▲1.5%)の上昇率が下がったことが下落幅拡大に寄与した。
軽減税率対象品目のほとんどが食料(酒類、外食を除く)だが、10月の上昇率は前年比1.3%となり9月と変わらなかった。
1 非課税品目は家賃、診療代、授業料、教科書、介護料等
2 経過措置の対象となる品目は電気代、都市ガス代、通信料(固定電話、携帯電話)等
3 軽減税率対象品目は食料(酒類、外食を除く)、新聞代