木下安司著「コンビニエンスストアの知識」(日本経済新聞社、2002)によれば、コンビニは「時間」と「距離」、「品揃え」という3つの利便性を柱に発展してきた。
時間については、コンビニは基本的に24時間営業であるため、いつでも消費者が商品を買うことができる。よって、時間の面で消費者の制約がなく利便性が高い。
2点目の距離については、自宅の近くにもあるために利便性が高い。コンビニは大規模なデパートやスーパーとは異なり小規模な店舗であるため、都市部の駅や幹線道路周辺だけでなく、住宅街にも立地している。さらに、店舗数が多いため、おおむねどこにでもあるという利便性の高さもある。図表1を見ると、2018年のコンビニの店舗数は約6万店にもなり、小売業ではコンビニに次いで店舗数の多いドラッグストア(16,058店)やスーパー(5,000店)と比べて格段に多い(経済産業省「商業動態統計(2019年6月)」)
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3つ目の品揃えについては、言うまでもないが、コンビニには食料品や日用品、文具類、新聞・雑誌など幅広い商品が揃っている。近年はドラッグストアでも食料品を扱うところが増えているが、営業時間の長さや品揃えにおいて、コンビニが優位性を保っている。
なお、日本では、2011年3月の東日本大震災をはじめ、近年、深刻な災害が相次いでいる。特に災害時は、地域に店舗網が張り巡らされ、生活必需品が揃うコンビニの存在意義は大きい。現在、多くのコンビニでは、緊急時の物資供給や帰宅困難者の支援において自治体と連携協定を結び、社会的なインフラ機能を担うようになっている。
ところで、海外でコンビニへ行った際、日本のコンビニの良さを改めて感じる日本人も多いのではないだろうか。同じコンビニチェーンの店舗であっても、品揃えやサービス、店員の対応は国によって様々だ。
品揃えでは、海外では保存の効く加工食品が多い印象だが、日本ではそれだけでなく、弁当やおにぎり、惣菜、生鮮食品等の鮮度の高い食品も多い。これらに加えて、レジの横では、おでんや揚げ物、コーヒーなど、その場で調理された温かい食品も売られている。近年では、コンビニが独自で開発するプライベートブランド(PB)商品も人気だ。PB商品はおおむね全ての商品領域に広がっている。
モノである商品だけでなく、コンビニで提供されているサービスも豊富だ。コピーやFAX、金融機関のATM、各種チケットや乗車券等の販売代行、宅配便やクリーニングの受付、光熱・水道費などの公共料金の収納代行、住民票等の各種証明書の交付サービスなどにも対応している。
さらに、最近のコンビニでは、3つに利便性を越えて、「多様化したサービスの提供」や「丁寧な接客」といった面でも進化し続けている。
例えば、高齢化が進み、買い物困難者が多い地域では、商品の配達サービスや移動販売なども進んでいる。また、清潔なトイレを誰にでも無料で開放しているという点も、日本独自のサービスなのかもしれない。店員の接客態度も質が高いだろう。海外では時に憮然とした態度やレジ打ちの遅い店員などに遭遇するが、日本では一般的にマニュアルに基づいた丁寧な対応がなされており、利用客のストレスが少ないように感じる。レジでの素早い対応や来店客へかかさない挨拶、整然とした商品陳列、行き届いた店内の清掃などは、日本の「おもてなし」精神が根底にあるのではないだろうか。
3 なお、同調査のデータでは、コンビニ店舗数は56,485店。
3――コンビニ24時間営業は必要か