保険加入における逆選択の逆-健康管理に努めている人ほど医療保険に加入している?!-

2019年07月30日

(岩﨑 敬子) 保険会社経営

■要旨

保険に加入する人は自分の健康状態が分かるけれど、保険会社にはその人の健康状態は分からないという「情報の非対称性」によって、保険加入者が高リスクの人に偏ってしまう現象は逆選択と言われ、保険市場において中心的な課題である。
 
しかし、実社会では逆選択の現象が常に確認されてきたわけではない。より病気やけがをするリスクの低い人が保険に加入する傾向が強いという「逆選択の逆」の現象であるアドバンテージャス・セレクションもいくつかの保険市場で確認されてきた。
 
本稿では、ニッセイ基礎研究所が実施したWEB調査の分析結果から、日本の医療保険市場では健康管理に努めている人ほど医療保険に加入しているというアドバンテージャス・セレクションが起こっている可能性があることと、その要因に時間割引率と曖昧さ回避度が見られるということとを、紹介する。

■目次

1――逆選択とモラルハザード、アドバンテージャス・セレクション
2――健康のために行動している人ほど医療保険加入している
3――健康行動を行う人と医療保険に入る人の共通点:低い時間割引率と曖昧さ回避傾向
4――おわりに

保険研究部   准主任研究員

岩﨑 敬子(いわさき けいこ)

研究領域:保険

研究・専門分野
応用ミクロ計量経済学・行動経済学 

経歴

【職歴】
 2010年 株式会社 三井住友銀行
 2015年 独立行政法人日本学術振興会 特別研究員
 2018年 ニッセイ基礎研究所 研究員
 2021年7月より現職

【加入団体等】
 日本経済学会、行動経済学会、人間の安全保障学会
 博士(国際貢献、東京大学)
 2022年 東北学院大学非常勤講師
 2020年 茨城大学非常勤講師

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