日本株、方向感が乏しい展開か~足元と2016年の類似性~

2019年05月28日

(前山 裕亮) 株式

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1――5月に下落した日本株式

日本株式は年初から上昇基調にあったが、5月の連休明けから下落した【図表1】。TOPIX(東証株価指数:紺線)の推移をみると1月4日の大発会に1,471ポイントまで下落していたが、1月末には1,500ポイント台後半まで回復し、さらに2月には1,600ポイントを回復した。3月、4月は上昇が鈍化したものの、概ね1,600ポイント台を維持した。それが5月は米中問題の深刻化懸念、さらに為替市場で1ドル111円後半から109円中盤まで円高が進行したことなどから、TOPIXは再び1,500ポイント台中盤まで下落した。

2――PER、EPSをみると2016年夏までと類似

2――PER、EPSをみると2016年夏までと類似

5月に株価が下落したこともあり、予想PERからみて足元、株価は割安な水準にある。TOPIXの予想PER(青線)は12倍程度であり、2013年以降、概ね13倍を上回っていることを踏まえると、低水準にあるといえる【図表2】。5月の下旬はTOPIXが1,500ポイント中盤から下げ渋る展開が続いた。これは米中問題の先行きが懸念されていても現時点では交渉決裂といった事態まで考えられていないこともあるが、この割安感が株価を下支えしていた可能性もあるだろう。
 
ただ、その一方で予想PERからみて割安にあるからといって直ちに株価が大きく上昇する展開は期待できないと考えている。それは、米中問題は長期化が見込まれていることもあるが、米中問題に加えて企業業績の動向も株価の重しになっていることがあげられる。
 
TOPIXの予想EPS(赤線)の推移をみると、(ハイライト部分の)2018年秋ごろから低下してきたことが分かる。4月以降、やや底打ちしているようにもみえるが、予想には5月に発表された米国の中国への追加関税の影響などがまだ考慮されていないため、今後、さらに低下する可能性もある。
 
足元と同様に(ハイライト部分の)2016年は夏ごろまで予想EPSが低下基調であったが、その期間の予想PERは概ね12倍から13倍で推移している(赤丸囲い部分)。そのため、予想EPSが上向いてこなければ、一時的に株価が上昇することはあっても、株価が安定的に予想PER13倍を超える水準を保つことは難しいのではないだろうか。

3――さいごに

3――さいごに

では、いつ予想EPSは上向くのだろうか。企業業績に対する不透明感が根強いだけに、少なくとも3月決算企業の中間決算が出揃う秋ごろまでは予想EPSは低下、もしくは横ばいが続くのではと考えている。
 
ゆえに秋ごろまでTOPIXは2016年と同様に予想PERが12倍から13倍、つまり1,500ポイントから1,600ポイント中盤までのレンジで方向感の乏しい展開が続くと思われる。

金融研究部   主任研究員

前山 裕亮(まえやま ゆうすけ)

研究領域:医療・介護・ヘルスケア

研究・専門分野
株式市場・投資信託・資産運用全般

経歴

【職歴】
2008年 大和総研入社
2009年 大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)
2012年 イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
2014年 ニッセイ基礎研究所 金融研究部
2022年7月より現職

【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会検定会員
 ・投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」 客員研究員(2020・2021年度)

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