データで見る「エリア出生率比較」政策の落とし穴-超少子化社会データ解説-エリアKGI/KPIは「出生率」ではなく「子ども人口実数」

2019年04月22日

(天野 馨南子) 子ども・子育て支援

■要旨

2045年には総人口が2015年の83%に減少すると推計される日本。

しかし、この総人口にはまだ、1年間に200万人も生まれていた団塊ジュニア人口が含まれている。
2016年以降、既に日本の空の下に生まれる子どもは100万人を切っており、団塊ジュニアが消え行くであろう半世紀後には、人口減少スピードはさらに加速化する。

日本全体の人口をマクロ的に俯瞰するならば、何よりも「出生率を上昇させること」が少子化=子どもの数の減少対策となる(本稿では、海外からの移民による人口増加策は考えない)。

では、地方創生、過疎が叫ばれる各地方における少子化(子ども数の減少)対策、すなわちエリア別のミクロ少子化対策においても、出生率上昇がKGI(重要目標達成指標:Key Goal Indicator)またはKPI(重要業績評価指標:key performance indicator)となりうるのだろうか。

実はそうではなく、同一目標(子どもの数の増加)に対するマクロ(日本全体)の政策とミクロ(各地方)の政策は必ずしも一致しない。

本稿では、地方の「少子化対策」として議論される政策において、非常に多くみられる「出生率上昇が、当エリアの少子化対策の最終指標である」に対して、必ずしも(大半のエリアにおいては)そうではないことを示したい。

■目次

はじめに-マクロ政策とミクロ政策は必ずしも一致しない
1――エリアの少子化=その土地の子どもの減少、とは?
2――2つの決定要因のどちらが影響力を持つのか
3――女性逃避エリアに子ども人口の未来なし
4――おわりに

生活研究部   人口動態シニアリサーチャー

天野 馨南子(あまの かなこ)

研究領域:暮らし

研究・専門分野
人口動態に関する諸問題-(特に)少子化対策・東京一極集中・女性活躍推進

経歴

プロフィール
1995年:日本生命保険相互会社 入社
1999年:株式会社ニッセイ基礎研究所 出向

・【総務省統計局】「令和7年国勢調査有識者会議」構成員(2021年~)
・【こども家庭庁】令和5年度「地域少子化対策に関する調査事業」委員会委員(2023年度)
※都道府県委員職は就任順
・【富山県】富山県「県政エグゼクティブアドバイザー」(2023年~)
・【富山県】富山県「富山県子育て支援・少子化対策県民会議 委員」(2022年~)
・【三重県】三重県「人口減少対策有識者会議 有識者委員」(2023年~)
・【石川県】石川県「少子化対策アドバイザー」(2023年度)
・【高知県】高知県「中山間地域再興ビジョン検討委員会 委員」(2023年~)
・【東京商工会議所】東京における少子化対策専門委員会 学識者委員(2023年~)
・【公益財団法人東北活性化研究センター】「人口の社会減と女性の定着」に関する情報発信/普及啓発検討委員会 委員長(2021年~)
・【主催研究会】地方女性活性化研究会(2020年~)
・【内閣府特命担当大臣(少子化対策)主宰】「少子化社会対策大綱の推進に関する検討会」構成員(2021年~2022年)
・【内閣府男女共同参画局】「人生100年時代の結婚と家族に関する研究会」構成員(2021年~2022年)
・【内閣府委託事業】「令和3年度結婚支援ボランティア等育成モデルプログラム開発調査 企画委員会 委員」(内閣府委託事業)(2021年~2022年)
・【内閣府】「地域少子化対策重点推進交付金」事業選定審査員(2017年~)
・【内閣府】地域少子化対策強化事業の調査研究・効果検証と優良事例調査 企画・分析会議委員(2016年~2017年)
・【内閣府特命担当大臣主宰】「結婚の希望を叶える環境整備に向けた企業・団体等の取組に関する検討会」構成メンバー(2016年)
・【富山県】富山県成長戦略会議真の幸せ(ウェルビーイング)戦略プロジェクトチーム 少子化対策・子育て支援専門部会委員(2022年~)
・【長野県】伊那市新産業技術推進協議会委員/分野:全般(2020年~2021年)
・【佐賀県健康福祉部男女参画・こども局こども未来課】子育てし大県“さが”データ活用アドバイザー(2021年~)
・【愛媛県松山市「まつやま人口減少対策推進会議」専門部会】結婚支援ビッグデータ・オープンデータ活用研究会メンバー(2017年度~2018年度)
・【愛媛県法人会連合会】結婚支援ビッグデータアドバイザー会議委員(2020年度~)
・【愛媛県法人会連合会】結婚支援ビッグデータ活用研究会委員(2016年度~2019年度)
・【中外製薬株式会社】ヒト由来試料を用いた研究に関する倫理委員会 委員(2020年~)
・【公益財団法人東北活性化研究センター】「人口の社会減と女性の定着」に関する意識調査/検討委員会 委員長(2020年~2021年)

日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)
日本労務学会 会員
日本性差医学・医療学会 会員
日本保険学会 会員
性差医療情報ネットワーク 会員
JADPメンタル心理カウンセラー
JADP上級心理カウンセラー

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