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年代別の結果~若いと独身の方が、40代以上は既婚者の方が悩みは多い?
同様に年代別に分析したところ、全体と比べていくつかの違いがあった(図表8)。30歳代以下では未既婚が有意な値となっており、未婚であることは悩みやストレスが増やす影響がある。特に25~29歳では未既婚の影響が強く、経済状態の余裕や体力があること、ハラスメントのある職場であること
10を越えた影響がある。一方で、40歳代では有意な値ではないものの、逆に結婚していることが悩みを増やす影響がうかがえる。50歳代でもごく僅かだが同様の傾向がある。つまり、いわゆる結婚適齢期の年代の女性では結婚していないことは悩みの種となりやすいが、40歳代以上では逆に結婚している方が悩みは増えるようだ。
40歳代は子どもの進学など子育てで難しい問題も重なる時期であり、徐々に親の介護問題なども始まる時期でもある。また、「女性のライフコースの理想と現実」等
11でも述べた通り、40歳代以上と30歳代以下では女性が外で働くことに対して、女性自身も親世代も(おそらく夫も)ジェネレーションギャップがあるようだ。40歳代以上の夫婦では、昔ながらの男女の性別役割分担意識が残っているために、仕事と家事・育児・介護の両立において妻の負担感が大きく、さらに、義理の実家との関係性の問題なども相まって、結婚している方が悩みが増えるのかもしれない。
子の有無については、必ずしも有意な値ではないが、子どもがいることは25~29歳では悩みを増やす影響が、逆に30~50歳代では悩みを減らす影響がうかがえる。なお、50歳代のみ有意な値である。つまり、子どもはある程度の人生経験や経済力が増してから持った方が悩みは生じにくく、50歳代では子育てにかかる労力が減るとともに、自分自身の老後が見えてくる時期でもあり、子どもがいることで一層悩みが減る傾向があるのだろう。
なお、40歳以上では結婚していることは悩みを増やす傾向がうかがえたが、子どもがいることは逆に悩みを減らす傾向を示すことは興味深い。子どもの進学問題などがあっても、悩みやストレスを増やすのは子ども要因ではなく、配偶者要因ということなのだろう。
また、40歳代では「男性も女性も、性別によらず、業績で公平に評価されている」職場であることが唯一、有意な値で悩みを減らす影響を示しており、男女の不公平感に対する不満の多い年代(不満に直面している年代)である様子もうかがえる。
さらに、就業女性のうち既婚女性や既婚で子のいる女性に限定して、説明変数に配偶者の年収や義理の実家との距離を加えて分析したところ、どちらも「休暇が取りにくい」ことが悩みを増やす影響として強く表れた。また、必ずしも有意な値ではないが、年齢別に見ても配偶者の年収の高さはどちらかと言えば悩みを増やす影響が、義理の実家との距離の遠さは悩みを減らす影響があった。
配偶者の年収の高さについては意外なようだが、非就業の既婚女性でも同様の結果を確認できている。詳細は別途報告したいが、配偶者の年収と悩みの有無の関係を見ると、配偶者の年収が300万円~1,000万円未満では年収の増加とともに悩みは減るが、年収1,000万円以上では悩みは若干増え、年収300万円未満では若干減る。このことは、例えば、夫が高年収の家庭では夫は仕事に邁進して家庭をあまり顧みないことで、妻は家事・育児の負担の全てを担うことで悩みが多いといった状況が考えられる。