貸出・マネタリー統計(19年1月)~銀行の不動産貸出への偏重が緩和

2019年02月12日

(上野 剛志) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

3.マネーストック: 投資信託の前年割れは25ヵ月連続に

2月12日に発表された1月のマネーストック統計によると、金融部門から市中に供給された通貨総量の代表的指標であるM2(現金、国内銀行などの預金)平均残高の伸び率は前年比2.36%(前月は2.39%)、M3(M2にゆうちょ銀など全預金取扱金融機関の預貯金を含む)の伸び率は同2.10%(前月は2.12%)とともに前月からほぼ横ばいとなった(図表13)。ここ3ヵ月の伸び率の水準はともに安倍政権発足前の2012年後半以来の低水準に留まっている。

貸出の伸びが限定的に留まっていることに加え、既往の原油高や輸出減速等の影響で経常黒字が縮小していることが影響しているとみられる。
 M3の内訳を見ると、最大の項目であり、全体の約半分を占める預金通貨(普通預金など)の伸び率が前年比5.6%(前月改定値は5.7%)と大きく低下したほか、現金通貨の伸び率も同3.3%(前月は3.4%)と若干低下している。一方、定期預金などの準通貨(前月▲1.8%→▲1.7%)の伸びがマイナス幅を縮小したことで全体の伸び率が横ばいに留まった(図表14)。
広義流動性(M3に投信や外債といったリスク性資産等を加算した概念)の伸び率は前年比1.90%(前月改定値は1.96%)と、やや低下した(図表13)。

内訳では、既述の通り、M3の伸び率はほぼ横ばいであったが、国債(前月0.7%→当月0.5%)、外債(前月12.5%→当月12.4%)の伸びがやや縮小したほか、投資信託(元本ベース・前月▲8.7%→当月▲8.8%)の伸びがマイナス幅を拡大した。投資信託の前年割れは25ヶ月に及んでおり、残高はこの間に12兆円減少(2016年12月96.5兆円→2019年1月84.8兆円)している。投資信託からの資金流出には歯止めがかかっていない(図表15)。
 
 

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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志(うえの つよし)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴

・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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