まず、不動産投資額について、J-REIT「100万円」分の投資は、賃貸マンション「150万円」分の投資に相当する。その際、借入金「67万円」を利率「1.0%」で調達している(借入比率は45%)。
次に、収入と費用について、賃貸マンション「150万円」からの賃料収入は「9.5万円」、賃貸費用
*1は「2.3万円」(対収入比率24%)であり、賃貸純収益(賃貸収入-賃貸費用、NOIと言う)は「7.2万円」となる。さらに、大規模修繕費は「0.4万円」(対収入比率4%)であり、不動産から得られるキャッシュフロー(賃貸純収益-大規模修繕費、NCFと言う)は「6.8万円」となる。
この結果、J-REITが全国に分散して保有する賃貸マンションの利回りは、表面利回りが「6.3%」、NOI利回りが「4.8%」、NCF利回りが「4.5%」となり、この水準が現在のプロによる賃貸マンション投資の利回り目線だと言えそうだ。
ここから、借入金「67万円」への支払利息「0.7万円」(対収入比率7%)、資産運用報酬を含む管理コスト「0.6万円」(対収入比率6%)を差し引いた運用収益は「5.6万円」( 対収入比率59%、利回り3.7%)となる。そして、この「5.6万円」がJ-REITを100万円購入した投資家の受け取る分配金「4.0万円」の原資となる
*2。
ところで、女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」の投資トラブルが表面化して以降、個人による不動産投資の危うい実態が新聞などで報じられている。また、多額の資金を融資した金融機関側の不正行為が明るみに出るなか、金融庁は個人向け投資用不動産融資について調査しモニタリングを強化する方針である。
個人が不動産投資を検討するにあたり、習得すべき知識はいくつか挙げられるが
*3、本稿で記したJ-REITの運用実績も不動産投資におけるものさしの1つとして活用できると思われる。
*1賃貸費用の内訳は、建物管理委託費(26%)、公租公課(22%)、その他諸経費(17%)、修繕費(16%)、水光熱費(6%)。
*2実際のJ-REITの分配金は会計上の利益のため、大規模修繕費の代わりに減価償却費を控除する。
*3渡邊布味子『はじめての不動産投資入門(1)』(ニッセイ基礎研究所、研究員の眼、2018年7月31日)