以上のとおり、診療時間による加算に注目して最近の受診動向をみると、時間外、休日、深夜など
の診療時間外の受診が減り、早朝や夜間の診療時間内の受診が、就労年代を中心に増えていた。厚生労働省「医療施設静態調査」によると、夕方遅くも開いている診療所が増加傾向にあり、外来の機能分化が進んでいるようだ。
医師等の負担について考えると、比較的施設数が多い、内科や外科よりも、施設が少なく夜間や休日の患者が多い、小児科等で問題とされることが多い。小児科の医療体制に関する厚生労働省の「子どもの医療費制度の在り方に関する検討会(2016年に報告書公表)」によれば、小児科医は増加しているが、小児科を持つ医療機関は減っているうえ、地域で偏りがちであり、小児医療体制が不十分な地域では、一部の医療機関で負担が重くなっているとされる。共働き世帯が増え、子どもの診療時間内に受診させられない世帯が増えている可能性がある。また、子どもを持つ人が減少していることで、子どもの健康状態の判断について相談できる友人が身近にいない等によって、医療機関を受診するしかない可能性もある。
医療費についてみると、2016年度の外来の時間外等加算(時間外、休日、夜間)による割増分は、初診・再診あわせると、およそ490億円だった
6。外来の医療費が全部で14.4兆円
7、初診・再診料(加算は除外)が全部で1.6兆円
8であるため、その影響は小さくはない。このうちどの程度が、急病や、患者側で判断がつかない等、時間外に病院に相談したり、診療を受けるのが望ましいものなのかはわからない。しかし、図表3のとおり、就労年代の男性で、時間外、休日、深夜加算の算定割合が女性を上回っており、仕事の都合等による時間外診療もあると想像された。
子どもの健康状態に対して、電話による相談窓口を設置した結果、電話相談が増えて、救急搬送が減った事例がある
9。こういった事例を踏まえ、近年、日常での「健康教室」や「小児救急電話相談(♯8000)」を各地で充実させる等、夜間や休日の診療をさらに減らすための政策が実施されている。
また、就労者も日中病院に行くことができれば、または子どもを病院に連れて行くことができれば、時間外受診の問題は多少解消できる。医療体制の整備による課題解決だけでなく、子育て支援や働き方改革の面でも課題解決を図っていく必要があるだろう。
6 第3回NDBデータより筆者計算
7 厚生労働省「国民医療費」より
8 第3回NDBデータより筆者計算
9 第3回子どもの医療制度の在り方等に関する検討会資料(2016年1月)