今後は年末に向けて、102.8兆円の要求額の圧縮作業に入る。昨年度は101.0兆円の要求額に対して当初予算は97.7兆円と、約3兆円削減した。
一方で今年は6月の骨太方針で示された消費増税に対する経済対策(駆け込みと反動減の平準化策)の内容も詰めていかなければならない。2014年に消費税を5%→8%へ上げた際に、駆け込み需要、そしてその反動減が予想以上に長期化してしまったことに対する反省を踏まえ、アベノミクス景気が腰折れしないようにするための対策だ。その景気対策費は2019年度、2020年度の当初予算に計上するが、今回の概算要求には入っておらず、当初予算策定時に上乗せする。2019年度の補正予算では2019年10月実施予定の消費増税に間に合わないため、急ぎ具体策を考えなければならない。対策の実効性が検証されないまま大型予算編成を許すことにもなりかねない。
日銀の試算
4では、今回の消費増税による家計への実質的な負担は2.2兆円であり、前回の2014年の増税時の8.0兆円と比較し大きくない。上げ幅が2%(前回は3%)と小さいことに加え、既に軽減税率などの対策や教育無償化による負担減があるためだ。但し、軽減税率の財源が見つかっていないこと、教育無償化の対象は子育て世帯に限られていることなどの問題点は残る。いずれにしても消費増税を通じた実質所得の低下による消費減少は避けられない。必要以上の景気対策は悪影響を先延ばしにし、財政赤字を拡大させる恐れがある。
また、景気対策にかかる歳出は、例年の当初予算の基準とは別枠で上乗せすることが出来る。経済対策という名目で景気対策には関連がない予算が計上され、財政規律が緩む懸念もある。
上記の景気対策に加え、歳出圧力が高まっていることにも注意が必要だ。
1点目は、国土強靭化対策だ。6月の大阪北部地震、7月の西日本豪雨、そして9月の台風21号、北海道胆振東部地震と災害が続いている。石破氏は総裁選の公約で防災省の創設を掲げている。安倍首相続投の場合も、国民の防災に関する関心の高まりを背景に、2019年の参院選のアピール材料として国土強靭化を謳う可能性は高い。国土強靭化への予算を投資と捉え、財政規律の枠外に位置づけるべきとの提言もあり、そうなった場合、歳出額は一層大規模になることも考えられる。
2点目は、税収が過去最高水準に達しており、更なる歳出拡大を招く恐れがあることだ。7月4日に公表された2017年度の一般会計税収は昨年末の見込みから1.1兆円上振れし58.8兆円となっている。所得税、消費税、法人税の基幹3税がいずれも前年度を上回った。2018年度の税収は更に伸び、過去最高の1990年の60.1兆円を超える可能性も出てきた。安倍首相は「経済成長なくして財政再建なし」と、成長重視の色合いを強めてきた。今後税収がバブル期を越し最大になるなどの実績が伴ってくれば、世間がその考えに一層傾き、歳出の拡大に繋がる恐れもある。
4 日本銀行「経済・物価情勢の展望 2018 年 4 月」
6――おわりに