インシュアテック「スタートアップ」 に対する「既成保険会社」の対応 -敵対か、協調か。意外にも協調路線が多数派を占める-

2018年08月14日

(松岡 博司)

■要旨

「インシュアテック」を含むいわゆる「デジタル化」は、既成の業界のビジネスモデルに破壊的なインパクトをもたらすと言われる。「インシュアテック」という言葉も「既成保険会社」に破壊的なインパクトを与えるものとのイメージを帯びている。

しかし「インシュアテック」においては、これまでのところは、「既成保険会社」と「インシュアテック」の推進者である「スタートアップ」が協力関係を築いている事例が多い。

「スタートアップ」の6割超は「既成保険会社」の保険バリューチェーンの向上、強化を図るビジネスに取り組んでいる。

また「既成保険会社」が「スタートアップ」の資金調達に協力・投資する動きが顕著である。この「既成保険会社」が行った投資の65%は、自社の保険バリューチェーンを効率化、機能アップできる可能性のあるテクノロジーに取り組んでいる「スタートアップ」に当てられた。

このように2017年までの状況を見る限りでは、インシュアテックの「スタートアップ」が、従来型の「既成保険会社」に破壊的なインパクトを与えるだけの存在感を持っているとは言いがたい。

とはいえ、現時点の「既成保険会社」と「スタートアップ」の協調の背景には、保険業界のICT利活用が他業態に比べ相対的に遅れているため、そこに対応することが「スタートアップ」、「既成保険会社」双方にとって、手っ取り早く合理的であったからと見ることもできる。

今後、「インシュアテック」の流れが、「既成保険会社」に破壊的なインパクトを与えるような形に方向を変えていくのか、動向を見守りたい。

■目次

1――はじめに
2――「スタートアップ」の6割超は「既成保険会社」の保険バリューチェーンの向上、
   強化を図るビジネスに取り組んでいる
3――「既成保険会社」によるインシュアテック「スタートアップ」への投資件数の推移
4――「既成保険会社」が投資している「スタートアップ」の概要
5――「既成保険会社」による「スタートアップ」への投資体制
6――「既成保険会社」が投資を行ったスタートアップの本拠国分布状況
7――さいごに
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