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プラットフォームとは:プラットフォーマーへと進化を遂げたAmazon
プラットフォームとは、「異なる2種類以上のユーザー・グループを結びつけ、1つのネットワークを構築するようなサービスで、ユーザー・グループ間の取引を促すインフラとツールを提供するもの
1」である。「プラットフォーム=IT」といった印象を持つことが多いが、プラットフォームというビジネスは何もITに限ったものではない。不動産業でも、不動産仲介業は売主(貸主)と買主(借主)を結びつけるプラットフォームであり、ショッピングモールなどの商業施設はテナントと消費者を結びつけるがプラットフォームである。
しかし、近年注目を集めるプラットフォームの多くはIT産業で誕生している。従来の産業ではプラットフォームを構築・拡大するのに、多くの資金と時間を要したが、IT産業では物理的なインフラを構築する必要性が少ないため、プラットフォームを低コストかつ短期間で拡大することができる。また、ITを活用すれば、プラットフォームのデータを低コストで収集・分析することができるため、データをもとにプラットフォームの利用価値を高めることもできる。そのため、「プラットフォーマー」という用語も、一般的にはプラットフォームを提供するIT企業のことを指す。
Amazonは1995年に米国でCEOのジェフリー・プレストン・ベゾス氏が設立した。同社はECでの書籍販売から事業を開始したが、徐々に取扱商品を拡大し、現在は数億種の商品を取り扱うと言われる。また事業領域も拡大しており、現在ではECストアに加え、電子書籍デバイスであるKindleやAIスピーカーのAmazon Echoなどの開発・提供、クラウドサービスであるAmazon Web Service(以下AWS)など、幅広いビジネスを展開している。さらに米国をはじめ欧州や日本など14カ国で事業を展開するなど、世界各国に進出している。
設立当初のAmazonはプラットフォーマーではなかった。同社のECサイトで、他社は商品を販売することができず、同社のみが販売を行うインターネット上の小売企業でしかなかったためである。しかし、カスタマーレビューやマーケットプレイスなどのサービスを開始することで、プラットフォーマーへと進化を遂げている。
カスタマーレビューとは、消費者が商品の情報や感想を投稿し、他の消費者が参考にできるというものだ。これまで書籍の紹介は出版社や書店が行ってきたが、Amazonは消費者が自由に書籍の感想や評価を共有することを可能にした。これは双方向性と匿名性があるインターネットだからこそ実現できた機能である。同機能は、レビューの書き手と読み手という2つのユーザー・グループを結びつけるプラットフォームだと言える。
またマーケットプレイスとは、米国では2000年、日本では2002年から開始したサービスで、第三者がAmazonのサイトに新品や中古の商品を出品できるようにしたものだ。これは、商品を出品する販売者と消費者という2つのユーザー・グループを結びつけるプラットフォームである。
1 Eisenmann, Parker and Alstyne(2006)を参照。プラットフォームという言葉には様々な定義があり、本稿では多面的プラットフォーム(Multisided Platform)をプラットフォームとした。他の定義などは、Hagiu and Wright(2015)や加藤(2016)に詳しい。