貸出・マネタリー統計(18年2月)~投資信託の減少ペースが拡大

2018年03月09日

(上野 剛志) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

1.貸出動向: 伸び率は7ヵ月連続で低下

3月8日に発表された貸出・預金動向(速報)によると、2月の銀行貸出(平均残高)の伸び率は前年比2.09%と前月改定値(同2.31%)から低下した(図表1)。77ヵ月連続でプラスを維持しているものの、伸び率は7ヵ月連続で低下し、2016年8月以来の低水準となった。地銀(第2地銀を含む)の伸び率は前年比3.4%(前月も同じ)と堅調に推移したが、伸び率の低下が続く都銀等の伸び率が前年比0.6%(前月は1.1%)と大きく低下し、全体の減速に繋がった(図表2)。
 
ここ数ヵ月の大幅な伸び率低下は、前年にあったM&A資金など大口貸出による押し上げ効果の一巡のほか、金融庁から問題視されたアパート・カードローンの鈍化、前年比での円高進行に伴う外貨建て貸出の円換算額目減りなどが影響しているとみられる(図表3・4)。
次に、為替変動等の影響を調整した実勢である「特殊要因調整後」の銀行貸出伸び率(図表1)1を見ると、直近判明分である1月の伸び率は前年比2.60%と12月の2.71%からやや低下。見た目(特殊要因調整前)の銀行貸出の伸び率も12月(2.44%)から1月(2.31%)にかけて低下していたが、この低下の中には、円高が進んだ影響が含まれるため、「特殊要因調整後」の伸び率低下幅は若干小幅に留まった。昨年7月以降の見た目の伸び率は大きく低下しているが、為替等の影響を除いた実勢の伸びは見た目ほど大きくはない(図表1)。

2月の「特殊要因調整後」伸び率は未判明だが、2月のドル円レートの前年比円高幅は1月からやや拡大しているため(図表4)、特殊要因調整後の伸び率は見た目の伸びの低下より若干マイルドとなり、前年同月比2.4%強になったと推測される。
なお、1月の新規貸出金利については、短期(一年未満)が0.612%(12月は0.676%)と低下した一方、長期(1年以上)が0.779%(12月は0.764%)と若干持ち直した(図表5)。最近は短期・長期ともに一進一退の推移が続いているが、日銀が長短金利操作によって強力に金利の抑制を続けている以上、貸出金利が明確に上向く可能性は低い。
 
 
1 特殊要因調整後の残高は、1カ月遅れで公表されるため、現在判明しているのは1月分まで。

2.マネタリーベース: 実質的にはやや持ち直し

3月2日に発表された2月のマネタリーベースによると、日銀による資金供給量(日銀当座預金+市中に流通するお金)を示すマネタリーベースの前年比伸び率は9.4%と、前月(同9.7%)から低下した。伸び率が1桁台に落ち込んだのは2ヵ月連続となる。内訳のうち、日銀当座預金の伸び率が前年比11.0%と前月(11.4%)から低下したことが原因である(図表6・7)。
また、22月末のマネタリーベース残高は475兆円となり、前月末比では1.5兆円減と2ヵ月連続で減少した。一方、季節要因を取り除いた前年同月差では、41.5兆円増と前月(41.2兆円増)をやや上回った。また、季節調整済みのマネタリーベース(平残)でも、前月比3.9兆円増(前月は1.7兆円減)と2ヵ月ぶりに増加に転じている(図表8)。2月は季節柄国債の発行超過(日銀当座預金減少要因)が大きく、マネタリーベースが拡大しにくい時期にあたることが影響しているうえ、日銀が米金利上昇発の金利上昇を食い止めるために国債オペを増額したため、季節要因を除外したベースでは、増勢がやや持ち直した。

ただし、今後も日銀の国債買入れによって市中に残存する国債残高が減少に向かうため、日銀の国債買入れペースは中期的に縮小に向かうとみられ、マネタリーベースの増加ペースも次第に鈍化していくと考えられる。

経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志(うえの つよし)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴

・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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