ECB利上げのタイミング-決め手は賃金かユーロ相場か金融安定のリスクか

2018年02月05日

(伊藤 さゆり) 欧州経済

■要旨
 
  • 欧州中央銀行(ECB)の利上げ前倒し観測が強まっている。
     
  • 18年内の利上げ観測も浮上しているが、フォワード・ガイダンスの大幅な修正にリスクが伴い、物価の基調を決める賃金の伸びが様々な要因から抑制されていることから、年内利上げはないと思われる。
     
  • ECBは、利上げのタイミングを賃金・物価、ユーロ相場の動き、金融システムの安定性などを考慮に決めると見られるが、最も重視するのは賃金・物価の動きだろう。
     
  • 労働市場の緩みやインフレ期待、生産性の伸びを抑制してきた投資の停滞など賃金の伸びを抑制してきた要因は今後緩和に向かう。ECBは、今後、資産買入れの18年内の終息と19年の利上げ開始に向けて布石を打つだろう。

■目次

1――高まる利上げ前倒し観測
2――18年内利上げは困難な理由
  1|フォワード・ガイダンスの大幅修正のリスク
  2|弱い賃金、インフレ圧力
3――緩和縮小のスピードを決める要因
  1|賃金と物価
  2|ユーロ相場
  3|金融システムの安定性
4――おわりに

経済研究部   常務理事

伊藤 さゆり(いとう さゆり)

研究領域:経済

研究・専門分野
欧州の政策、国際経済・金融

経歴

・ 1987年 日本興業銀行入行
・ 2001年 ニッセイ基礎研究所入社
・ 2023年7月から現職

・ 2011~2012年度 二松学舎大学非常勤講師
・ 2011~2013年度 獨協大学非常勤講師
・ 2015年度~ 早稲田大学商学学術院非常勤講師
・ 2017年度~ 日本EU学会理事
・ 2017年度~ 日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
・ 2020~2022年度 日本国際フォーラム「米中覇権競争とインド太平洋地経学」、
           「欧州政策パネル」メンバー
・ 2022年度~ Discuss Japan編集委員
・ 2023年11月~ ジェトロ情報媒体に対する外部評価委員会委員
・ 2023年11月~ 経済産業省 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 委員

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