2017~2019年度経済見通し-17年7-9月期GDP2次速報後改定

2017年12月08日

(斎藤 太郎) 日本経済

1. 2017年7-9月期は前期比年率2.5%へ上方修正

12/8に内閣府が公表した2017年7-9月期の実質GDP(2次速報値)は前期比0.6%(年率2.5%)となり、1次速報の前期比0.3%(年率1.4%)から上方修正された。法人企業統計の結果が反映された設備投資(前期比0.2%→同1.1%)、民間在庫変動(前期比・寄与度0.2%→同0.4%)が大幅に上方修正されたことが成長率を押し上げた。1次速報から2次速報への改定幅(前期比年率+1.1%)のほとんどが設備投資、民間在庫変動によるものであった。
2017年7-9月期の2次速報と同時に2016年度の年次推計値が公表され、実質GDP成長率は1.3%から1.2%へと下方修正された。成長率全体の修正は小幅だったが、公的固定資本形成が速報値の前年比▲3.2%から同0.9%へと大幅に上方修正される一方、設備投資が前年比2.5%から同1.2%へ、民間消費が前年比0.7%から同0.3%へと下方修正されるなど、需要項目毎の改定幅は比較的大きかった。
また、2015年度は第一次年次推計値から第二次年次推計値への改定が行われ、実質GDP成長率は1.3%から1.4%へ上方修正された。2016年度とは逆に、設備投資が前年比0.6%から同2.3%へ上方修正されている。

四半期毎の成長率も過去に遡って改定され、2017年1-3月期(前期比年率1.0%→同1.5%)、4-6月期(前期比年率2.6%→同2.9%)が上方修正された。7-9月期と合わせると、3四半期続けて1次速報から上方修正されたことになる。需要項目別には、設備投資が2016年度中の伸びが下方修正される一方、2017年度入り後の伸びが大幅に上方修正されている点が目立つ。2016年度の速報から年次推計への改定に加え、今回から民間消費、設備投資について速報推計における需要側推計値と供給側推計値の加重平均ウェイトの見直しが行われたことも影響している可能性がある。1次速報時点では、企業収益の大幅増加にもかかわらず、GDP統計の設備投資は横ばい圏の動きとなっていたが、今回の改定によって2017年度入り後の設備投資の回復基調がより明確となった。
(大幅増益が続く中でも設備投資意欲は高まらず)
財務省が12月1日に公表した法人企業統計によると、2017年7-9月期の全産業(金融業、保険業を除く、以下同じ)の経常利益は前年比5.5%と5四半期連続の増加となったが、2017年4-6月期の前年比22.6%からは伸びが大きく鈍化した。製造業は前年比44.4%(4-6月期:同46.4%)と4四半期連続の二桁増益となったが、非製造業が前年比▲9.5%(4-6月期:前年比12.0%)と5四半期ぶりの減益となった。

経常利益の伸びは大きく鈍化したが、これは2016年7-9月期の経常利益が純粋持株会社の子会社からの受取配当の急増という特殊要因で大きく押し上げられていた裏が出た面が大きい。純粋持株会社を除いた経常利益は前年比23.2%(4-6月期:同28.7%)と4四半期連続の二桁増益となる。経常利益は実態としては好調を維持している。

また、季節調整済の経常利益は前期比▲1.5%と6四半期ぶりに減少したが、落ち込み幅は前期までの高い伸びの反動の範囲にとどまっており、過去最高益となった2017年4-6月期に次ぐ高水準となっている。特に、円安、海外経済の回復を背景に輸出の増加が続く製造業は3四半期連続で過去最高益を更新した。
一方、設備投資は回復しているものの、企業収益の好調さを考えれば、そのペースは引き続き緩やかにとどまっている。2017年4-6月期の法人企業統計では、設備投資(ソフトウェアを含む)が前年比4.2%と4-6月期の同1.5%から伸びを高めたが、引き続き企業収益の伸びを下回り、「設備投資/キャッシュフロー比率」は低水準の推移が続いている。

設備投資の増加はあくまでも企業収益の大幅な増加に伴う潤沢なキャッシュフローを主因としたもので、企業は設備投資に対する慎重姿勢を崩していないと考えられる。

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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