2|FSOCのメンバーの意見
FSOCは、メンバーの投票結果の背後にある意見を公表
5している。
この公表資料及び各メンバーの声明によると、以下の通りとなっている。
Janet Yellen FRB議長は、「5,000億ドル以上の資産の減額を含む、AIGが2013年以降に行った変化を引用して、金融商品部門の解散、住宅ローン保険会社の売却は、金融安定性への脅威が少なくなったことを意味している。」と述べた。さらに、「AIGの苦境が年金及びその他の保険商品の一部の保険契約者の解約をもたらす可能性があるが、金融システムは潜在的なファイヤーセールに対応できるはずだ。」と付け加えた。
OCC長官のKeith Noreika氏は、「同じ業界内の同様の立場の競合企業の中から、会社を選んで、あるものはシステム上重要であり他のものはそうではないとラベル付けすることによって、不公平で恣意的な方法で、競争環境に悪影響を与える可能性がある。」と述べた。さらには、「(保険が銀行とは異なる中で)銀行のような規制のために個々のノンバンクの会社を指定するというFSOCの権限と能力についての懸念」を強調した。
保険専門知識を有する独立メンバーであるRoy Woodall氏は、2013年の当初の指定以来、AIGによって行われた変化に基づいて、「今日のAIGは、金融危機の時代の約半分の規模の組織であるため、指定された最初の決定基準を満たしていない。」として、賛成の投票をした。ただし、Woodall氏は、一定のAIGの活動、特に保証機能を備えた年金に関する活動は、いまだマクロプルデンシャルの観点から監視されるべきである、と述べた。さらに、「金融の安定に影響を与える最も有望な規制の開発は、保険会社の負債の流動特性を監視し、流動性ストレステストを行い、流動性リスク管理プロセスを評価することによって、保険会社の流動性リスクの規制を強化するために設計されているNAICの最近発表されたマクロプルデンシャル・プロジェクトである。」と述べた。
一方で、FDIC会長のMartin J.Gruenberg氏は、「2013年の当初の決定の根底にあるのは、AIGが裁量的な解約可能な大量の負債を有していたことである。」として反対した。さらに、「もし、会社が重大な財務上の苦境に陥った場合には、短期間で大量の負債が解約され、これらの債務を満たすために資産の流動化が行われ、金融市場のストレスを引き起こし、米国の金融安定性に対する脅威になる。」、「これらの問題は、2013年と同じままである。一部のエクスポジャーの減少があったが、他のもの、特に生命保険及び年金の契約が増加している。」「本日の決定は、重大なストレス環境下で、今日のAIGのような大規模で相互接続された国際的に活発な会社の破綻の潜在的な影響を評価するために、何年も前の中程度のストレス環境でのはるかに小規模な保険会社の破綻の経験に大きく依存している。したがって、これらの限定された経験は、AIGのような規模と複雑さの会社にとって、解約リスクと流動性リスクの仮定のための有用なガイダンスを提供していない。」と述べた。
Gruenberg氏はまた、「2013年以降のAIGの全体的な縮小も、外国の管轄区域を含む重要でない事業の売却も、以前FSOCによって識別された破綻の障害に実質的な影響を及ぼしていない。会社の資産規模は2013年以来わずかに減少しているだけで、会社全体の中の外国の収益と外国資産の比率はほぼ同じである。」として、AIGのSIFI指定解除の支持理由を否定した。
FHFA長官のMelvin Watt氏は、FSOCは、(1)ノンバンク金融会社の重大な財務上の苦境が米国の金融安定性を脅かす可能性がある、かまたは(2)ノンバンク金融会社の性質、範囲、規模、スケール、集中度、相互関係又は活動の混在が、米国の金融安定性を脅かす可能性がある、という2つの基準のいずれかが満たされている場合、ノンバンク金融会社にFRBの監督と健全性基準を課すことがあるが、この2つ目の基準の独立した審査や決定が十分な形で行われていない、として反対した。また、AIGの国内及びグローバル事業の複雑さと相互関係についても、AIGが各種の努力を行っていることは認めるが、これらの努力が進行中の現段階で、SIFI指定解除の判断を行うことは時期尚早で懸命ではない、とした。
Melvin Watt氏はまた、今回の議決が10人の議決権のあるメンバーのうちの6人の賛成でなされたことに対して、法律で要求されている3分の2の要件を満たすためには、7人の賛成が必要であるとして、今回の決定に異議を唱えた。
CFPB局長のRichard Cordray氏は、義務を果たすための潜在的な資産流動化が米国の金融安定に脅威を与える可能性があるというMartin Gruenberg氏の声明に同意し、さらにMelvin Watt氏の、SIFI指定の是非を判断するための2つ目の基準の審査が十分に行われていないとの考え方に同意して、今回の議決で反対票を投じた。