(a)1984年~1999年
物販・外食・サービス支出は、所得要因と人口・世帯要因の影響で増加した。
所得要因は1984年から1994年にかけて年率+2.7%~+3.9%と大きくプラスに寄与した。これはバブル期前後の賃金上昇によるものである
3。1994年から1999年にかけては、金融機関の相次ぐ破綻など、バブル崩壊の影響が実体経済に顕在化したことで、可処分所得の伸びが急速に落ち込み、寄与度はほぼゼロとなったが、1984年から1999年を累計すると所得要因は年率+2.4%のプラス寄与となった。
消費行動要因は年率-1.2%~-0.7%のマイナス寄与となった。支出の中には食糧などの生活必需品も含まれ、所得ほど経済環境の変化の影響を受けなかったため、消費行動要因は所得要因と逆の動きを示す傾向があったことが推察される。
人口・世帯要因は、年率+1.0%~1.3%と一貫してプラスに寄与した。世帯数が増加したことに加え、人口割合の大きい「団塊の世代」が消費の多い50代に移行する期間であったことが要因である。
(b)1999年~2014年
物販・外食・サービス支出は、可処分所得減少を主因に減少した。
1999年から2009年は長引く景気後退の影響により、可処分所得は減少を続け、年率-1.4%~-1.6%とマイナスに寄与している。2009年から2014年は所得要因が+0.6%となったが、1999年以降で累計すると年率-0.8%の寄与となった。
消費行動要因は、1999年以降で累計すると年率-0.1%程度にとどまり、この期間を通して見ると影響は限定的だった。
人口・世帯要因は、1999年以降はプラス寄与が1%を割り込み、2009年から2014年にかけては寄与度が年率+0.3%まで縮小した。これは世帯数の増加ペースが減速していることに加え、「団塊の世代」が最も消費する年齢層から、時間推移と共に消費を減らす年齢層となったことも要因である
4。
近年の小売業の売上不振の要因として、「消費離れ」など消費行動要因が指摘されることが多い。しかし以上の分析からは、可処分所得減少が商業施設の売上環境悪化の原因であったと言える。また前章の分析もあわせると、消費のボリュームゾーンである中年世代の可処分所得減少が大きく影響したものと考えられる。若年世代は、中年世代の可処分所得減少による将来の経済的な不安の高まりから、物販・外食・サービス支出を減らし、貯蓄率を高めたものと推測される。そのため、これも中年世代の可処分所得減少による影響であると見なせば、上記の分析結果以上に、中年世代の可処分所得減少が物販・外食・サービス支出を押し下げたことが示唆される。
5. おわりに