コラム

夫婦調査に見る「学歴上位妻の台頭」-生涯未婚データ考-男性が背負わない結婚、という選択

2017年08月28日

(天野 馨南子) 子ども・子育て支援

妻が学歴上位の夫婦の割合

図表2をみて、想像するよりも「夫よりも妻の学歴が高いカップルが多い」ように感じられる人は少なくないのではないだろうか。

日本においては、歴史的には男性が学歴も社会的地位も年齢も高い「(男性)上位婚」(以下、上位婚)とよばれる結婚形態が主流であった。しかしながら「年の差婚」の希望と現実-未婚化・少子化社会データ検証-データが示す「年の差」希望の叶い方 でも示したように、より価値観の近い同年齢婚や伝統的価値観を覆す年上妻婚が近年では大きくその割合を伸ばしてきている。
 
そこで、伝統的な上位婚とは異なる「学歴上位妻婚」の状況を算出してみることとした(図表3)。
データからは既に4組に1組以上の割合で妻の学歴が上位の結婚が成立している、ことがわかる。
 
読者にとって、それよりも意外な結果であると思われるデータとして、既に1980年代後半から5組に1組が学歴上位妻婚であった、ということも判明した。

今一度、図表2をみてみると、2010年の調査において、大卒妻の約3割が高卒以下の学歴の男性と結婚している。大卒であっても男性の学歴にこだわらないと見られる女性が約3割も「既婚者にはいる」と言う結果である。また、男女とも高校進学率が限りなく100%に近づいている現在、高卒女性が学歴下位の中卒男性を結婚相手として検討することがそもそも確率的に困難であることを考えると、もしかすると25%よりも高い割合の男女が「上位婚」にこだわらなくなってきている可能性さえも指摘できるのではないだろうか。

オーダーメイド結婚の可能性

人口ピラミッドの上半分、多数派を占める40代以上の人々から見ると、以上の分析結果は明らかに結婚観・結婚の姿が変化しつつあることを示している。
 
「僕が彼女を支えてあげないといけない」
「彼にリードして欲しい、ついていきたい」
 
確かにこれらの感覚も結婚観として否定されるものではない。

しかしながら、4組に1組という「学歴上位妻の台頭」という分析結果は、結婚希望がありつつも未婚で悩む独身者や彼らの結婚を応援する周囲の環境に、「結婚観のダイバーシティの壁」が立ちはだかっている面もあるのではないか、と示唆しているようにもみえる。

少なくとも本稿の結果を見て意外であると感じた人には「結婚観のダイバーシティの壁」は存在していた側面はあるだろう。
 
結婚の夢が叶うか叶わないかの境界線に見え隠れする「結婚観のダイバーシティの壁」。
 
結婚を希望しつつも未婚者が急増する中で、結婚希望者は、たった一度の人生「自分だけのオーダーメイドの結婚」を(親や社会の伝統的価値感に流されず)本当に追求できているのかどうか、今一度考えてみるのもよいかもしれない。

生活研究部   人口動態シニアリサーチャー

天野 馨南子(あまの かなこ)

研究領域:暮らし

研究・専門分野
人口動態に関する諸問題-(特に)少子化対策・東京一極集中・女性活躍推進

経歴

プロフィール
1995年:日本生命保険相互会社 入社
1999年:株式会社ニッセイ基礎研究所 出向


【委員歴/ご依頼順(現職優先)】

1.政府
・【総務省統計局】
「令和7年国勢調査有識者会議」構成員(2021年~)
・【こども家庭庁】
「若い世代の描くライフデザインや出会いを考えるワーキンググループ」構成員(2024~2025年度)
「令和5年度「地域少子化対策に関する調査事業」委員会委員」(2023年度)
・【内閣府特命担当大臣(少子化対策)主宰】
「少子化社会対策大綱の推進に関する検討会」構成員(2021年~2022年)
「結婚の希望を叶える環境整備に向けた企業・団体等の取組に関する検討会」構成メンバー(2016年)
・【内閣府男女共同参画局】
「人生100年時代の結婚と家族に関する研究会」構成員(2021年~2022年)
・【内閣府】
「令和3年度結婚支援ボランティア等育成モデルプログラム開発調査 企画委員会 委員」(内閣府委託事業)(2021年~2022年)
「地域少子化対策重点推進交付金」事業選定審査員(2017年~2018年)
「地域少子化対策強化事業の調査研究・効果検証と優良事例調査 企画・分析会議委員(2016年~2017年)

2.自治体
・【富山県】
「県政エグゼクティブアドバイザー」(2023年~)
「富山県子育て支援・少子化対策県民会議 委員」(2022年~)
「富山県成長戦略会議真の幸せ(ウェルビーイング)戦略プロジェクトチーム 少子化対策・子育て支援専門部会委員」(2022年)
・【高知県】
「元気な未来創造戦略推進委員会 委員」(2024年度~)
「中山間地域再興ビジョン検討委員会 委員」(2023年度)
・【三重県】
「人口減少対策有識者会議 有識者委員」(2023年度~)
・【愛知県豊田市】
「豊田市総合計画推進会議 有識者委員」(2025年度~)
・【石川県】
「少子化対策アドバイザー」(2023年度)
・【長野県伊那市】
「伊那市新産業技術推進協議会委員/分野:全般」(2020年~2021年)
・【佐賀県健康福祉部男女参画・こども局こども未来課】
「子育てし大県“さが”データ活用アドバイザー」(2021年)
・【愛媛県松山市】
「まつやま人口減少対策推進会議」専門部会・結婚支援ビッグデータ・オープンデータ活用研究会メンバー(2017年度~2018年度)

3.民間団体
・【東京商工会議所】
東京における少子化対策専門委員会 学識者委員(2023年~)
・【愛媛県法人会連合会】
えひめ結婚支援センターアドバイザー委員(2016年度~)
・【公益財団法人東北活性化研究センター】
「人口の社会減と女性の定着」に関する情報発信/普及啓発検討委員会 委員長(2021年~)
「人口の社会減と女性の定着」に関する意識調査/検討委員会 委員長(2020年~2021年)
・【中外製薬株式会社】
「ヒト由来試料を用いた研究に関する倫理委員会(通称:研究倫理委員会) 委員」(2020年~)
・【主宰研究会】
地方女性活性化研究会(2020年~)


日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)
日本労務学会 会員
日本性差医学・医療学会 会員
日本保険学会 会員
性差医療情報ネットワーク 会員
JADPメンタル心理カウンセラー
JADP上級心理カウンセラー

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