コラム

エレベーターの交通計算(待ち時間と輸送能力)-マンションのエレベーターは何台あれば適正なのか-

2017年04月03日

(中村 亮一) 保険計理

実際の計算結果

日立ビルシステムが提供している「交通計算サービス」1に基づくと、エレベーターの定員、速度、停止階について、いくつかのパターンをおいて、結果を計算すると以下の通りとなる。

前提条件(その1)
20階建マンション、階高(1階当たりの高さ)3m、各階の住居者数30名(各部屋3名×10戸)
全てのエレベーターが各階に停止
これにより、このようなマンションでは、例えば、13人乗り、分速120mのエレベーターが2台あれば、「平均運転間隔」60秒以内、「5分間輸送能力」5%程度を確保できることになる。

なお、この表によれば、結局は台数が最も重要なファクターであり、この程度の規模のマンションでは、定員数や速度はそれほど大きな影響を与えないと思われる結果となっている。

次に、エレベーターの仕様を上記のケース2に固定して、各階の住居者数やマンションの階数を変化させた場合を考える。

前提条件(その2)
階高(1階当たりの高さ)3m、エレベーター 定員13人 分速120m 台数2台
全てのエレベーターが各階に停止
これによれば、(ここでの交通計算の考え方によれば)各階の住居人数やマンションの階数は、エレベーターの仕様を統一している限りにおいては、平均運転間隔には影響を与えず、5分間輸送能力のみに大きな影響を与えることになる。

なお、超高層マンションでエレベーターが各階に停止する形だと、高層階の住民は上り下りに時間がかかり、低層階の住民は高層階の住民で満員になって素通りされてしまうケースも発生することになる。そこで、高層階と低層階でエレベーターの利用を区分する考え方が出てくる。

上記のケース11の30階建てのマンションの場合において、停止階のパターンを、高層階と低層階で区分することを考える。ただし、前ページの表から、30階建てのマンションの場合、2台では不足しているので、4台設置するとして、いろいろなケースを考えてみる。

前提条件(その3)
30階建マンション、階高(1階当たりの高さ)3m、各階の住居者数30名(各部屋3名×10戸)
エレベーターは定員13人が4台、2台は低層階用、残りの2台が高層階用とする。
この程度の規模のマンションになると、エレベーターを低層階用と高層階用に区分することや、その場合に高層階用のエレベーターに対して、より高速仕様を設置することの意義が見えてくることになる。
 

まとめ

マンションの購入は、非常に重要な決断である。エレベーターは毎日使用するものであり、特にこれから高齢化社会を迎えてくると、その利用が増加し、その位置付けがより一層高まってくることになる。

マンション購入時に販売担当者はあまりエレベーターのことを説明しないと思われる。ただし、日常生活の利便性等を考慮すれば、エレベーターの設置台数等の状況についても、十分な情報を得て、納得をして、マンション購入の選択をしていくことが大変大切なことである、と感じた次第である。
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