若年層の消費実態(5)-どこまで進んだ?デジタル・ネイティブ世代の「テレビ離れ」と「ネット志向」

2017年02月15日

(久我 尚子) ライフデザイン

■要旨
 
  • 本稿では、「若年層の消費実態」レポート第五弾として、デジタル・ネイティブ世代である今の若者のメディア利用状況や通信費の変化を捉えるとともに、情報通信技術の進化が消費行動へ与える影響について考察した。
     
  • 20代のメディア利用時間の変化を見ると、世間で言われている通り、今の若者では「テレビ離れ」と「ネット志向」が進んでいる。過去の変化率から将来を予測すると、2017年には20代男性でテレビをインターネットが上回る。ただし、現在のところ、テレビの利用時間は他のメディアと比べて長く、テレビには無視できない影響力があるようだ。
     
  • 今の若者の通信費はバブル期より倍増し、2000年初頭と比べてもおおむね増えている。既出レポートでは、外食やアルコール、ファッション、クルマなどにおいて、バブル期と比べて今の若者は「お金を使わない」様子がうかがえたが、「通信には時間もお金も使う」ようになっている。また、近年の技術進化を鑑みると、今の若者は、支出の増加分以上にハイレベルなデジタルライフを楽しめるようになっている。
     
  • 情報通信技術の進化が消費行動へ与える影響については、インターネット上の大量の無料情報や便利なアプリケーションサービスの存在により、今の若者は「お金を使わなくても便利なものがたくさんある」、「情報は無料」という価値観を持つとともに、比較検討志向やコスパ志向が強く、価格感度が高いことが考えられる。
     
  • 今の若者へのアプローチを考える際は、デジタル・ネイティブ世代ならではの消費価値観を理解し、テレビとインターネット、SNSなどの複数メディアを組み合わせる「クロスメディア」戦略により、情報の流れにいかに入りこむかが鍵である。

■目次

1――はじめに
2――デジタル・ネイティブ世代の成長と情報通信技術の進化
  ~ネットやケータイの普及・進化とともに育つ

3――デジタル・ネイティブ世代のメディア利用の状況
  1|メディア利用時間の変化
   ~「テレビ離れ」・「ネット志向」の進行で2017年には20代男性で逆転の予測、
    現在のところ「ながら利用」でテレビ利用時間が最も長い
  2|インターネット利用内容の変化
   ~利用端末はPCからスマホへ、SNSや動画視聴、ゲーム利用の増加
4――デジタル・ネイティブ世代の通信費の変化
  1|若年単身世帯の通信費の変化~バブル期の実質2倍、近年も増加傾向
  2|情報通信技術の進化が消費行動へ与える影響
   ~情報は無料、比較検討・コスパ志向の強まり
5――おわりに

生活研究部   上席研究員

久我 尚子(くが なおこ)

研究領域:暮らし

研究・専門分野
消費者行動、心理統計、マーケティング

経歴

プロフィール
【職歴】
 2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
 2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
 2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
 2021年7月より現職

・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)

【加入団体等】
 日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
 生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society

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