歯科医療の変化-かかりつけ歯科医は何をすべきか?

2016年12月12日

(篠原 拓也) 保険計理

3――歯科診療所の経営

医科では、診療所や病院で診療が行われる。歯科にも、病院での診療はあるが、診療の中心は、歯科診療所となっている。歯科診療所は、歯科医師が自ら経営を行うことが一般的である。そこで、歯科医師の視点から、歯科診療所の経営実態を見てみよう。

1|歯科医療費は横這いで、国民医療費全体に占める割合は低下している
国民医療費は、年々増加している。高齢化の進展に伴い、医科診療や薬局調剤が増加していることが、その原因となっている。一方、歯科医療費は、近年、2兆円台後半で緩やかな上昇となっている。この結果、国民医療費全体が伸びる中で、歯科医療費の占率は徐々に低下しており、2014年には7%弱となっている。このように、医療費の面で、歯科は、医科とは異なった動きを見せている。人口の高齢化にもかかわらず、近年、歯科医療のマーケットは、ほぼ横這いで推移していると言える。
2|歯科医師の数は、診療所従事者を中心に、年々増加している
歯科医師数の推移を見てみよう。歯科医師は医師と同様、年々増加している。病院従事者が多い医師とは異なり、歯科医師は、大半が診療所に従事していることが見てとれる。診療所従事者の数を比較すると、医師と歯科医師が拮抗している。
3|歯科診療所の数は横這いとなっている
次に、医療施設数の推移を見てみよう。歯科診療所は、2000年代以降、6万台の施設数でほぼ横這いとなって推移している。歯科診療所は、医科一般診療所と相似形で推移しており、医科の約7割となっている。医科の医療費が増加する反面、歯科の医療費が横這いであることを踏まえると、歯科診療所は競争が激しくなっていることがうかがわれる。
4|歯科診療所の収益力は医科一般診療所の半分以下
実際に、歯科診療所の収支状況を見てみよう。1施設あたりの歯科診療所の損益は、平均して、医科一般診療所の半分以下にとどまっている。医科に比べて、歯科の収支状況の厳しさが見てとれる。
医師と歯科医師の給与を比較してみよう。比較に際して、平均年齢や勤続年数に違いがあることに留意が必要だが、歯科医師の給与は、医師の給与に対して、男性で約6割、女性で約7割の水準となっている。概ね、歯科医師は、医師に比べて給与水準が低い傾向となっている。
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