米大統領・議会選挙-トランプ次期大統領の経済政策は玉石混交。今後の経済は、政策優先順位・遂行状況次第。

2016年11月18日

(窪谷 浩) 米国経済

■要旨
  1. 11月8日に実施された大統領・議会選挙では大方の予想に反してトランプ氏が勝利したほか、上下院でも共和党が過半数を確保し共和党が完全勝利した。
     
  2. 大統領選挙では、クリントン氏の得票率がトランプ氏を上回ったものの、選挙人獲得数では、注目された接戦州のほとんどをトランプ候補が勝利した。とくに石炭・鉄鋼などの製造業を抱える5大湖周辺のラストベルト(赤錆地帯)といわれる州で民主党から支持を奪ったことが勝利に貢献した。
     
  3. 出口調査の結果からは、クリントン氏が12年の前回選挙に比べて女性票、白人以外のマイノリティー層の票を取り漏らしている状況が浮き彫りになっており、メール問題やクリントン財団の問題など、同氏の属人的な問題が影響した可能性が指摘できる。
     
  4. 選挙結果判明後に、金融市場は一時的に乱高下したものの、トランプ次期大統領の政策期待から金融セクター中心に株高、長期金利上昇、ドル高となっている。
     
  5. トランプ次期大統領の経済政策は、減税、インフラ投資拡大、規制緩和など景気にプラスの政策と、不法移民対策、保護主義的な通商政策などの景気にマイナスの政策が混在。
     
  6. 同氏の政策公約は、非現実的な政策や議会共和党と大きく方針の異なる政策が多く、米経済への影響は政策の優先順位や政策遂行によって大きく左右されるとみられ、不透明感が強い。
■目次

1.大統領・議会選挙結果
  (1)選挙結果:
    事前の予想に反し、大統領、上下両院で過半数を確保する共和党の完全勝利
  (2)大統領選挙結果分析:
    トランプ氏が勝ったというより、クリントン氏が負けた選挙?
  (3)選挙後の金融市場の動向:
    トランプ次期大統領の政策期待から金融株、長期金利が上昇
2.トランプ次期大統領の経済政策と米国経済への影響
  (1)トランプ次期大統領の経済政策:玉石混交の経済政策。政策の実現性に疑問
  (2)米国経済への影響:債務残高の大幅な増加が見込まれる。
  (3)今後の注目点:当面は閣僚人事に注目

経済研究部   主任研究員

窪谷 浩(くぼたに ひろし)

研究領域:経済

研究・専門分野
米国経済

経歴

【職歴】
 1991年 日本生命保険相互会社入社
 1999年 NLI International Inc.(米国)
 2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
 2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
 2014年10月より現職

【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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