【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(11月号)~2ヵ月連続プラス 輸出回復の兆し

2016年11月10日

(斉藤 誠) アジア経済

16年9月のASEAN主要6カ国の輸出(ドル建て通関ベース)は前年同月比3.5%増と、前月の同4.5%増から低下した(図表1)。輸出は7月こそ海外需要の鈍化やレバラン(断食明け大祭)に伴う営業日数の減少によって下振れたものの、その後は2ヵ月連続のプラスとなり、緩やかな回復の動きが見られる。
タイの16年9月の輸出額は前年同月比3.4%増(前月:同6.5%増)と低下した(図表3)。それでも主力の工業製品を中心に2ヵ月連続でプラスとなり、輸出は回復傾向にある。

品目別に見ると、全体の約8割を占める主要工業製品は同4.2%増(前月:同9.0%増)と低下した。電子製品・部品(同3.8%増)、家電製品(同12.2%増)、機械・装置(同10.6%増)など幅広い品目がプラスを維持したものの、自動車・部品(同1.8%増)の伸びが大幅に低下したことが全体を押下げた。また鉱業・燃料は同13.5%減(前月:同11.9%減)と、引き続き石油製品を中心に前年割れとなった。一方、農産品・加工品は同3.2%増(前月:同0.2%減)と、アフリカ向けを中心にコメ(同6.4%減)が増加に転じたほか、ゴム(同12.1%減)のマイナス幅が縮小、さらにタピオカ(同7.2%増)や果物(同70.9%増)も上昇して6ヵ月ぶりのプラスとなった。

輸入額は前年同月比5.6%増と、前月の同1.5%減から上昇した。結果、貿易収支は25.5億ドルの黒字(前月から4.2億ドル増加)と、17ヵ月連続の黒字となった(図表4)。
マレーシアの16年9月の輸出額は前年同月比1.7%増(前月:同2.5%増)と低下した(図表5)。輸出は鈍化したとはいえ、主力の機械類と動植物性油脂が2ヵ月連続でプラスとなるなど年明けからの底打ちに向けた動きは続いている。

品目別に見ると、全体の約4割を占める機械・輸送用機器が同4.0%増(前月:同4.7%増)と、冷暖房機器・部品が大きく落ち込んで低下した。また動植物性油脂も同8.4%増(前月:同22.0%増)と、パーム油を中心に低下した。一方、鉱物性燃料は同5.2%減(前月:同16.2%減)と、天然ガスを中心にマイナス幅が縮小した。

輸入額は前年同月比4.9%増と、前月の同5.9%増から低下した。結果、貿易収支は18.4億ドルの黒字と、前月から2.7億ドル黒字が縮小した(図表6)。
インドネシアの16年9月の輸出額は前年同月比0.6%減(前月:同0.2%増)と低下した(図表7)。7月こそレバラン(断食明け大祭)に伴って営業日数が少なかったことから下振れたが、8月以降は再び底打ちの兆しが見られる。

品目別に見ると、輸出全体のそれぞれ1割強を占める石油ガスが同27.0%減(前月:同25.6%減)と引き続き全体の重石となる一方、製造品が同3.3%増(前月:同4.2%減)と機械類を中心に拡大傾向が続いている。また鉱業製品が同7.0%増(前月:同0.9%増)と2ヵ月連続のプラスとなったほか、農産品も同3.5%増(前月:同17.6%減)と21ヵ月ぶりのプラスに転じた。

輸入額は前年同月比2.3%減と、前月の同0.1%減から低下した。結果、貿易収支は12.2億ドルの黒字と、前月から8.5億ドル黒字が拡大した(図表8)。

経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠(さいとう まこと)

研究領域:経済

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴

【職歴】
 2008年 日本生命保険相互会社入社
 2012年 ニッセイ基礎研究所へ
 2014年 アジア新興国の経済調査を担当
 2018年8月より現職

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