インドの生命保険会社の状況-2015年度の決算数値を踏まえての成長性・効率性・収益性・健全性等の動向-

2016年10月31日

(中村 亮一) 保険計理

(2)予定死亡率
予定死亡率については、基本的には、最新の標準生命表である「IALM(2006-08)Ult.」をベースにしている。

ただし、この生命表をそのまま使用しているわけではなく、商品毎、性別、年齢別、対象市場毎に異なる調整を行った死亡率を採用している。さらに、その水準や方式についても、各社毎に異なっている。
なお、2015年度末において、個人生命保険(有配当)契約の責任準備金評価における予定死亡率について、LICを除く民間の5社は見直しを行っている。
また、LICにおける商品毎の予定死亡率は、下記の図表の通りである。生存保障要素の高い商品等については、低めの割増率や年齢のセット・バックによる割引を行い、死亡保障性の高い商品では、相対的に高い割増率を採用している。

LICも個人年金保険契約の年金受給後の予定死亡率については、セットバック年齢を3歳から4歳に引き上げるという変更を行っている。
以上のように、予定死亡率については、各社の経験データ等に基づいて、対象とする市場における経験発生率の状況等も勘案する中で、各社が合理的・妥当と考える水準に設定されている。

2|ソルベンシー比率(Solvency Ratio
6社のソルベンシー比率の推移は、以下の図表の通りである。各社毎に絶対水準は大きく異なっているが、各社ともIRDAIが最低基準としている1.5(150%)の水準を上回っている。

なお、LICのソルベンシー比率は安定的に推移しているが、民間の5社は規模の拡大に合わせて、絶対水準は低下してきている。ただし、引き続き高水準を維持している。
3|剰余の分配(契約者配当)の状況
保険契約者に対する配当としては、保険金増額式配当(Reversionary Bonus)と消滅時配当(Terminal Bonus)がある。このうち、例えば、2015年度決算に基づいて、2016年度に割り当てられる、2015年度の保険金増額式配当率については、以下の図表の通りとなっている。

2014年度から2015年度にかけては、HDFC Standardが配当率の一部引き下げを行っているが、他社は2014年度と同水準となっている。

なお、例えば、LICの養老保険や終身保険の場合、ここ5年間の配当率は同水準であり、安定的な配当が行われている形になっている。
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