(シナリオ別の金融市場見通し)
楽観シナリオでは、米国をはじめとする各国景気が順調に回復するため、メインシナリオと比べて、米利上げのペースは加速、ユーロ圏の利上げ開始も2018年に前倒しとなる。日本も物価上昇率の2%超えがメインシナリオよりも大幅に早まるため、量的緩和の停止、マイナス金利政策の終了・無担保コールレート誘導目標の復活は2018年度に前倒しされ、その後は2020年度から段階的な利上げが実施される。
日本の長期金利についても、2017年度までは底這うものの、2018年度以降は出口戦略の進展や利上げの段階的な実施、投資家のリスク選好、海外金利の大幅な上昇を受けて、メインシナリオよりも早期かつ大幅に上昇していくことになる。
ドル円レートについては、米国経済の回復加速と急ピッチの利上げに伴う日米金利差拡大が大幅なドル高に繋がり、2019年度には1ドル125円まで円安ドル高が進む。その後はメインシナリオ同様、日本の利上げ等を受けて円高ドル安基調に転じるが、期間を通じたリスク選好地合いや日本の期待インフレ率が高水準に保たれることなどから、予測期間終盤にかけてメインシナリオよりも円安ドル高水準での推移となる。
ユーロドルについては、一旦伸び悩むものの、ユーロの金融政策正常化が急ピッチで進むうえ、ユーロの信認が高まることから、メインシナリオよりもややユーロ高となり、予測期間末には1ユーロ1.3ドル手前まで水準を切り上げる。既述の通り、ドル円ではメインシナリオよりも円安ドル高となるため、ユーロ円では大幅な円安ユーロ高となる。
悲観シナリオでは、世界的に景気が低迷を続けるため、米国の利上げは長期にわたって見送られ、かつ再開してもすぐに打ち止めになる。ユーロ圏も出口戦略が大きく遅れ、その後の利上げも小幅に留まる。日本では物価の低迷が続くため、予測期間を通じて金融緩和が継続される(正常化はしない)。
日本の長期金利は、日銀が円高進行と自然利子率低下への対応として、予測期間序盤に長期金利誘導目標を引き下げることで低下、中盤にかけて過去最低レベルとなる▲0.3%~▲0.4%で推移する。予測期間終盤には、海外金利の持ち直しと、超低金利の副作用への配慮から誘導目標がやや引き上げられ、0%程度での推移となる。
ドル円レートについては、米景気の低迷によって日米金利差が殆ど拡大しないこと、世界的に市場がリスク回避的になることから、予測期間前半に急速な円高ドル安が進行、2018年度にかけて90円まで円高が進む。以降も基本的に同様の状況が続き、予測期間末にかけて1ドル90円での推移が続く。
ユーロに関しては、景気低迷に伴う金融緩和長期化や域内の不協和音から、予測期間前半に1.00ドルまで低下、その後、ECB利上げに伴って小幅に上昇するが、1.05ドルを下回ったままの状況が続く。既述の通り、ドル円ではメインシナリオよりも円高ドル安が進むため、ユーロ円では大幅な円高ユーロ安となり、主要先進国通貨では円が独歩高の様相になる。