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中国経済:景気指標の総点検(2016年秋季号)~李克強指数は急回復も、総合判断としては小康状態
2016年09月30日
(三尾 幸吉郎)
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4.総合指標を点検すると
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|景気評価点
以上で概観してきた景気10指標に関して、それぞれ3ヵ月前と比べて上向きであれば"○=1点"、下向きであれば"×=0点"として集計したものを筆者は景気評価点と呼んでいる。景気指標は全部で10個あるので、上向き下向きの分岐点は5点となる。ここもとの景気評価点の動きを見ると、2月には3点と「やや減速」の領域に落ち込んだものの、5月には7点と「やや加速」の領域まで回復した。また6月に2点と「やや減速」の領域に再び落ち込むと、7月以降は「横ばい」の領域に戻すといった具合に、ここもとの景気は一進一退を繰り返している(図表-15、16)。
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|李克強指数とGDP推計値
景気10指標のうち、電力消費量(工業)、鉄道貨物輸送量、銀行貸出残高(中長期)の3つの指標を用いた李克強指数
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を計算して見ると、電力消費量(工業)の持ち直しと鉄道貨物輸送量の底打ちを受けて、昨年秋をボトムに急回復してきている。貨物輸送手段が多様化していることを勘案して、道路や水路などを含む貨物輸送全体に入れ替えた李克強指数(修正後)を計算して見ても、今年2月をボトムに回復してきている(図表-17)。
一方、工業生産、製造業PMI、非製造業PMIの3つを説明変数として、当研究所で開発した線形モデルで計算した「GDP(月次)推計値」を見ると、7月は前年同月比6.6%増、8月は同6.7%増と4-6月期の前年同期比6.7%増とほぼ同水準で推移している(図表-18)。
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李克強指数は、李克強首相が遼寧省党委員会書記だった2007年、景気実態を表す統計として、電力消費量(工業)、鉄道貨物輸送量、銀行貸出残高(中長期)の3つを重視したことに由来する。加重割合は様々あるが、ここでは3指標を均等に加重している。
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|総合判断
以上の分析を総括すると、工業部門については、工業生産こそ低迷しているものの、電力消費量は持ち直し、李克強指数が修正前・修正後ともに上昇してきたことから、回復基調にあると考えている。一方、非製造業に関しては、非製造業PMIが高水準ながら横ばいに留まっており、道路貨物輸送量の伸びも昨年通期の伸びを下回っていることから、成長の勢いはやや鈍化した可能性が高いと思われる。また、景気評価点とGDP推計値の動きを総合的に見ると、今年2月には景気が一旦失速しそうになったものの、国有企業がインフラ投資を加速させたことで3月には急回復した。その後、4月以降の景気は一進一退の動きを示しており、現在の景気に関する総合判断としては、失速懸念も加速期待も小さい小康状態にあると考えている。
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三尾 幸吉郎
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