コラム

生涯未婚率と「持ち家」の関係性-少子化社会データ再考:「家」がもたらす意外な効果-

2016年07月11日

(天野 馨南子) 子ども・子育て支援

【はじめに】

6月の研究員の眼「未婚化と少子化に立ちはだかる『まだ若すぎる』の壁-少子化社会データ検証:『逆ロールモデルの罠』」では、日本において生涯未婚率1が着々と上昇している、というデータを示した。2010年の国の調査においては、男性の5人に1人、女性の10人に1人が生涯未婚のままである可能性が高い、というデータである。

婚外子比率が2パーセント台である日本においては、結婚というステップを経て子どもが生まれている。そうであるならば、未婚化(特に女性)は少子化にシャープに影響を及ぼすこととなる。

進行する未婚化に強い影響がある要因を探ることは、少子化対策として必要不可欠である。

そこで本稿では、国が提供している都道府県別の大規模データを用い、少子化の前段階にある未婚化に焦点をあてて要因分析を行った。

その結果、1つ特に注目すべき結果が見られたのでご紹介をしたい。
 
1 調査時点において50歳である男女で1度も結婚経験がない者の割合。

【都道府県別 生涯未婚率の状況】

まず各都道府県の生涯未婚率の全体像を見ておきたい。
図表1は2010年における各都道府県の生涯未婚率について男女別ランキングを作成したものである。(1)は生涯未婚率が低い、すなわち、結婚経験者が多い都道府県10エリアである。一方、(2)は結婚経験者が少ない10エリアとなっている。
 
結婚経験者が多いエリアを見ると多少男女で異なるものの、福井・滋賀・富山・岐阜・三重・石川の6県が男女ともにおいて、上位10エリアに入っている。
結婚経験者が少ないエリアとしては、東京・沖縄・高知・神奈川の1都3県が男女ともランクインしている。
以上の情報からだけでも、ある特徴がみられる。図表2は結婚経験者が男女とも多い上記6県を日本地図上で表したものである。赤色の円で男女とも生涯未婚率の低いエリアにマークしたものだが、丁度日本列島を東西に分ける北陸から関西にかけてのタテのエリアにわかりやすく集中している。
このことは何を示しているのだろうか。

生活研究部   人口動態シニアリサーチャー

天野 馨南子(あまの かなこ)

研究領域:暮らし

研究・専門分野
人口動態に関する諸問題-(特に)少子化対策・東京一極集中・女性活躍推進

経歴

プロフィール
1995年:日本生命保険相互会社 入社
1999年:株式会社ニッセイ基礎研究所 出向


【委員歴/ご依頼順(現職優先)】

1.政府
・【総務省統計局】
「令和7年国勢調査有識者会議」構成員(2021年~)
・【こども家庭庁】
「若い世代の描くライフデザインや出会いを考えるワーキンググループ」構成員(2024~2025年度)
「令和5年度「地域少子化対策に関する調査事業」委員会委員」(2023年度)
・【内閣府特命担当大臣(少子化対策)主宰】
「少子化社会対策大綱の推進に関する検討会」構成員(2021年~2022年)
「結婚の希望を叶える環境整備に向けた企業・団体等の取組に関する検討会」構成メンバー(2016年)
・【内閣府男女共同参画局】
「人生100年時代の結婚と家族に関する研究会」構成員(2021年~2022年)
・【内閣府】
「令和3年度結婚支援ボランティア等育成モデルプログラム開発調査 企画委員会 委員」(内閣府委託事業)(2021年~2022年)
「地域少子化対策重点推進交付金」事業選定審査員(2017年~2018年)
「地域少子化対策強化事業の調査研究・効果検証と優良事例調査 企画・分析会議委員(2016年~2017年)

2.自治体
・【富山県】
「県政エグゼクティブアドバイザー」(2023年~)
「富山県子育て支援・少子化対策県民会議 委員」(2022年~)
「富山県成長戦略会議真の幸せ(ウェルビーイング)戦略プロジェクトチーム 少子化対策・子育て支援専門部会委員」(2022年)
・【高知県】
「元気な未来創造戦略推進委員会 委員」(2024年度~)
「中山間地域再興ビジョン検討委員会 委員」(2023年度)
・【三重県】
「人口減少対策有識者会議 有識者委員」(2023年度~)
・【愛知県豊田市】
「豊田市総合計画推進会議 有識者委員」(2025年度~)
・【石川県】
「少子化対策アドバイザー」(2023年度)
・【長野県伊那市】
「伊那市新産業技術推進協議会委員/分野:全般」(2020年~2021年)
・【佐賀県健康福祉部男女参画・こども局こども未来課】
「子育てし大県“さが”データ活用アドバイザー」(2021年)
・【愛媛県松山市】
「まつやま人口減少対策推進会議」専門部会・結婚支援ビッグデータ・オープンデータ活用研究会メンバー(2017年度~2018年度)

3.民間団体
・【東京商工会議所】
東京における少子化対策専門委員会 学識者委員(2023年~)
・【愛媛県法人会連合会】
えひめ結婚支援センターアドバイザー委員(2016年度~)
・【公益財団法人東北活性化研究センター】
「人口の社会減と女性の定着」に関する情報発信/普及啓発検討委員会 委員長(2021年~)
「人口の社会減と女性の定着」に関する意識調査/検討委員会 委員長(2020年~2021年)
・【中外製薬株式会社】
「ヒト由来試料を用いた研究に関する倫理委員会(通称:研究倫理委員会) 委員」(2020年~)
・【主宰研究会】
地方女性活性化研究会(2020年~)


日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)
日本労務学会 会員
日本性差医学・医療学会 会員
日本保険学会 会員
性差医療情報ネットワーク 会員
JADPメンタル心理カウンセラー
JADP上級心理カウンセラー

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