2|今回の提案内容の概要(ANPR )
FRBの公表している内容によると、以下の通りとなっている。
(1)保険会社のタイプにより、2つのアプローチを提案
資本要件に対するアプローチについては、FRBは、1)システム上重要な保険会社(SIIC)に適用される
連結アプローチ(consolidated approach)、2)銀行や貯蓄金融機関を所有する保険会社(IDIHC)のための
ビルディング・ブロック・アプローチ(building-block approach)、と呼ばれる2つのアプローチを提案している。このうち、2)のビルディング・ブロック・アプローチについては、基本的には、保険業界が要望してきたアプローチに基づいたものとなっている。
(2)FRB議長等の発言
FRBは、「利害関係者が、金融の安定を促進するため及び保険会社が所有する預金取扱機関を保護するための資本基準の適切な構造についてコメントする十分な機会を提供するために、ANPRを公表した」としている。
また、FRBのJanet L. Yellen議長は、「我々が検討しているフレームワークは、保険会社の、規制されたそして規制されていない子会社全体の全てのリスクに対処するであろう。」「私は、この提案は、私たちが監督している保険会社にとって適切であり、それが私たちの金融システムの耐性力と安定性を高める資本基準に向けた重要なステップであると考えている。」と述べている。
さらに、FRBのDaniel K. Tarullo理事は、「今日提案されたデュアルアプローチは、様々な種類と複雑さを有する金融仲介機関によってもたらされる異なるリスクに対する資本規制を調整している我々の努力を示すもう一つの例となっている。」と述べている。
(3)2つのアプローチの概要
2つのアプローチの概要は、以下の通りである。
1) 連結アプローチ(Consolidated Approach:CA)
SIFIに指定されている保険会社(SIIC)(2016年5月末時点で、AIG、Prudentialの2社)
9に対して適用される。
連結アプローチは、保険会社全体の資産と保険負債を、リスクのセグメントに分類し、連結レベルでの各セグメントに適切なリスクファクターを適用し、必要資本の最低限の比率を設定する。
具体的には、以下の算式による。
キャピタル・レシオ=適格資本/Σ(エクスポジャー金額×リスクファクター)
2) ビルディング・ブロック・アプローチ(Building Block Approach:BBA)
銀行や貯蓄金融機関を所有する保険会社(IDIHC)(2016年5月末時点で12社)
10に対して適用される。
ビルディング・ブロック・アプローチは、理事会の監督の目的を反映するための調整を条件に、結合されたグループレベルの資本要件に到達するために、異なる会社(州あるいは外国保険会社、非保険金融会社、非金融会社、持株会社)のそれぞれの既存の資本要件(それぞれの会社形態を監督する資本要件に基づいて決定)を集約する。
具体的には、以下の算式による。
キャピタル・レシオ=適格資本/Σ(調整後必要資本×スカラー)
ここにおける「調整」には、米国におけるSAPの間やSAPと外国管轄地域の間の会計実務を一致させ、標準化するための調整に加えて、会社間の取引を消去する調整が含まれる。
また、「スカラー(Scalar)」の使用で、異なる管轄地域間の厳格さの違いを反映する。
9 MetLifeも、FSOCにより、SIFIに指定されていたが、3月に連邦裁判所がこの指定に反対する判決を出しており、(この判決に対する上訴もなされているが)現在はSIFI指定会社とは見なされていない。
10 First American Financial、State Farm Insurance、Donegal Mutual Insurance等が含まれている。