2|保険者
公的医療保険の保険者は、連邦政府、州政府及び地方自治体から、財政的、組織的に独立した公法上の法人である「
疾病金庫(Krankenkassen:health insurance fund)
5」となる。疾病金庫
6の数は、1992年1月には全国で1,223であったが、各種の公的医療保険制度の改革の動きを受けて、吸収・合併が進んできており、2016年1月には118にまで減少している。
疾病金庫は、(a)地域疾病金庫(AOK)、(b)企業疾病金庫(BKK)、(c)同業組合疾病金庫(IKK)、(d)農業疾病金庫(LKK)、(e)鉱業・鉄道・船員年金保険(KBS)、(f)代替疾病金庫(vdek)という6種類に分類される。
(d)農業疾病金庫(LKK)と(e)鉱業・鉄道・船員年金保険(KBS)は、それぞれに該当する職業従事者のために設立されたものである。(b)企業疾病金庫(BKK)は、企業や企業グループ単位で設立・運営される。(c)同業組合疾病金庫(IKK)は、職業組合単位で設立・運営される。(a)地域疾病金庫(AOK)は、上記のいずれにも該当しない人(小規模企業の被用者、学生、一部の自営業者等)を主な対象に、地域単位で設立・運営される。
公的医療保険の加入者は、基本的には、(1)企業疾病金庫が設立されている企業等に勤務している場合にはその企業疾病金庫、(2)同業組合疾病金庫が設立されている事業所に勤務している場合にはその同業組合疾病金庫、(3)それ以外の場合には勤務地の地域疾病金庫、に加入する。(4)ただし、これらに代わって、労働者(ブルーカラー)は労働者代替金庫(EAR)に、職員(ホワイトカラー)は職員代替金庫(EAN)に加入することができた。なお、2009年に労働者代替金庫と職員代替金庫が統合して代替疾病金庫ができた。
1996年以降、加入者の疾病金庫選択権が拡大され、加入者は疾病金庫を自由に選べることができるようになった。ただし、企業疾病金庫と同業組合疾病金庫については、それぞれの金庫の定款において、認められる場合にのみ選択可能となっている。即ち、これらの疾病金庫は、従来通りの加入者に限定する「
閉鎖型疾病金庫」
7と、従来の加入者に加えて、他の疾病金庫からの新規加入者も受け入れることとした「
開放型疾病金庫」に分かれることとなった。これにより、例えば、企業疾病金庫の場合、従来の閉鎖型では、母体企業からの事務所費や職員給与に対する資金補助等が行われていたが、開放型に移行することで、これらの補助が行われなくなっている。
いずれにしても、これらの改革により、加入者の獲得を巡って、疾病金庫間の競争が行われることになり、これが疾病金庫の再編につながることとなった。なお、2007年4月からは、種類の異なる疾病金庫間の合併も可能となっている。
保険者数という点では、企業疾病金庫の数が多いが、被保険者数という点では、地域疾病金庫と代替疾病金庫の2つで7割程度を占めている。