【アジア・新興国】タイの生命保険市場

2016年03月15日

(斉藤 誠) アジア経済

4会社別シェアの推移
会社別シェア(収入保険料ベース)を見ると、2014年は最大手のAIAが全体の22.6%を占めたものの、前年から2.2%ポイント縮小した。一方、Bangkok Life、Muang Thai Life、Krungthai AXA Lifeがそれぞれ1%超シェアを拡大させた。
タイ生保市場のプレイヤーを大きく2つに分けるとすれば、AIA、Thai Life、Allianz Ayudhyaといったエージェント主体のグループと、Muang Thai Life(カシコーン銀行傘下)、Bangkok Life(バンコク銀行傘下)、Krungthai AXA Life(クルンタイ銀行傘下)、SCB Life(サイアム商業銀行傘下)といった銀行窓販主体のグループに分かれる。後者の銀行窓販主体のグループは、支店が1000店以上もある四大銀行傘下であり、銀行との協力関係を追い風に2000年代に入って以降、シェアを急速に拡大している。
 
5資産運用状況
2014年の保険会社の運用資産残高は、前年比21.7%増の2兆1,766億バーツ(約7兆円)と、前年の9.7%増から上昇した。2014年は、好調な株式市場を背景に株式や投資信託といったエクイティ投資および社債の運用収益が改善したことが運用資産残高の拡大に寄与した。
タイの生命保険会社の運用資産構成割合を見ると国債が64.8%、社債が17.3%、株式等が9.6%、貸付が4.6%と、国債中心の運用となっている(図表8)。2011年頃から景気の停滞を受けてタイ銀行(中央銀行)は政策金利を段階的に引下げてきたことから金利の低下傾向が続いており、タイの10年国債利回りは2011年2月末の3.9%から2016年2月末の2.1%まで低下した。このような状況下において、各社ではより魅力のある商品を提供するため、資産利回りの改善に向けた運用資産構成割合の変更の検討に加え、デュレーションマッチング等の手法の活用等を実施している。

経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠(さいとう まこと)

研究領域:経済

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴

【職歴】
 2008年 日本生命保険相互会社入社
 2012年 ニッセイ基礎研究所へ
 2014年 アジア新興国の経済調査を担当
 2018年8月より現職

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