医療の待ち時間は、根の深い問題である。今後、医療機器等の性能向上により、短縮が図られるだろう。そのための努力は、続ける必要がある。しかし、待ち時間の短縮を優先して、医療の質が低下するならば本末転倒である。
従来、日本ではフリーアクセスが医療の前提となってきた。だが、単に、「いつでも、好きなところで受診可能」とするやり方は、医療現場に混乱をもたらしかねない。2013年の社会保障制度改革国民会議の報告書では、「フリーアクセスを(中略)『必要な時に必要な医療にアクセスできる』という意味に理解し(中略)、この意味でのフリーアクセスを守るためには、緩やかなゲートキーパー機能を備えた『かかりつけ医』の普及は必須(後略)」としている。地域包括ケアシステムを進めるためには、かかりつけ医によるプライマリケアと、大病院等での専門医療とに、医療施設の機能分化を進めることが必須である。大病院外来の紹介状の義務化も含めて、病院の機能分化を進め、医療制度全体の効率を高めていくことが必要と考えられる。
1 本稿は、「日本の医療-制度と政策」島崎謙治(東京大学出版会, 2011年)を参考にしている。
2 厳密には、医療施設の開業日1日あたりの患者数。
3 高度医療の提供能力を有するなど、医療法の要件を満たす医療施設が厚生労働大臣の承認の上で称するもの。2015年6月現在、84医療施設が該当。
4 もちろん患者の緊急性が高い場合には、優先的に救急医療が行われる。
5 待機問題の緩和に向けてウォークインセンターが設置され、24時間・予約なしで、受診可能となっている。
6 将来の保険導入を前提としていない療養。
7 「療養の範囲の適正化・負担の公平の確保について」(社会保障審議会医療保険部会,平成26年10月15日,資料1)による。
8 「外来医療(その3)」(中医協, 平成27年11月18日, 総-6)による。