高年齢労働者のための雇用制度の整備

2016年01月06日

(篠原 拓也) 保険計理

企業の定年年齢は上昇の兆しを見せている。図表1のとおり、定年年齢を65歳以上とする企業の割合は16%を超えており、徐々に高まっている。少子高齢化の進展により、企業の高年齢者労働力の確保と、高年齢者の労働継続意欲の高まりが、その背景にあるものと考えられる。
定年を巡る高年齢者雇用措置には、定年制の廃止、定年年齢の引上げ、継続雇用制度の導入、の3つがある。それぞれの特徴は、図表2のとおりである。2013年の高年齢者雇用安定法改正では、継続雇用制度の対象者を労使協定で限定する仕組みが廃止された。これにより、企業には、希望する労働者全員に、65歳までの雇用を確保する措置を設けることが義務づけられた。
高年齢者雇用の各措置の割合を見ると、図表3のとおり、継続雇用制度が大半を占めている。その中でも、図表4のとおり、再雇用制度のみを用意している企業の占率が高い。
これまでは、企業の都合を優先するあまり、再雇用制度を通じて、高年齢者の労働条件は大きく変更されることが多かったものと見られる。これは、高年齢者の労働力を、現役世代労働力を補完するものと位置づけてきたことに他ならない。しかし、図表5のとおり、定年後も継続雇用を希望する人は8割以上に上っている。図表6のとおり、31人以上規模企業における60歳以上の常用労働者は、全体の1割を占め、その数は300万人を超えている。今後、その存在感は、更に高まる。企業は、高年齢者を中核的労働力と位置づける必要が出てこよう。
高年齢者を、中核的労働力と位置づけて、高度な機能発揮を促していくためには、個々の労働者の仕事への取り組み方を踏まえて、それを幅広く受け入れることのできる、柔軟な雇用制度を用意することが必要と考えられる。

例えば、継続雇用制度において、勤務延長制度と再雇用制度を併用して、個々の高年齢者の仕事への意欲、能力、体力等に応じて、労働条件を設定することが考えられる。
 
今後、日本において人口の高齢化が進む中で、各企業には、いかに高年齢労働者の機能発揮を促すかが、問われることとなろう。高年齢労働者が、働きやすい環境で、やりがいを持って仕事をして、その結果、企業の生産性向上が図られるよう、雇用制度の整備が必要と考えられる。
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