同大統領は大統領令によってメキシコとの南部国境での不法移民問題について「侵略」と認定し、「国家非常事態」を宣言した。これに伴い、南部国境での亡命手続きの中止や難民受け入れプログラムの無期限延期、南部国境警備への軍隊の活用も決定された。
また、移民保護プロトコル
1を復活させる一方、CHNV仮釈放プログラム
2を撤回させたほか、一時保護ステイタス(TPS)
3の対象国を縮小させた。さらに、キャッチ・アンド・リリース
4方針を終了させるなど、バイデン前政権で阻止された1期目の政策の多くを復活させたほか、同前政権の寛容な移民政策の多くを撤回した。
一方、2期目に新たに導入した移民政策として、全ての外国人に対して、米国政府に指紋を登録することを義務付け、違反した場合に刑事罰の対象としたほか、移民を支援する団体への資金援助を終了することを指示した。また、米国で出生した子供に市民権を与える現在の出生地主義から、米国に不法滞在している、あるいは一時的な合法的身分の親のもとで生まれた子供を除外するように指示した。
さらに、国際麻薬カルテルや中米のギャングをテロリストに指定し、第二次世界大戦以降発動されていなかった一般的に戦時下で適用される1798年の適性外国人法を根拠に国外追放を行う方針を示した。
もっとも、出生地主義の変更に対しては民主党系の州や人権団体から多くの訴訟が提起され、軒並み連邦地裁から差し止め命令が出された。これらの動きに対して6月下旬に連邦最高裁は出生地主義変更が違憲か合憲かの判断を示さずに、連邦地裁が出した差し止め命令は原則として原告に適用され、全米一律に適用されないという判断を示し、下級裁判所の裁判官が大統領令を阻止する権限は限定と判断した。一方、連邦最高裁の判決以降にも移民の親たちとその幼児らを代表して米自由人権協会(ACLU)が提起した集団訴訟に対して、地方裁判事が大統領令の発効を一時停止するなど流動的な状況となっている。
また、適正外国人法の適用についても訴訟が提起されており、4月上旬に連邦最高裁は制限付きで適用を容認する一方、追放される人にも異議申し立ての機会を与える必要がある示すなど、玉虫色の判断を示した。実際に、4月下旬に連邦最高裁は当事者からの異議申し立てを受けて、南米ベネズエラのギャングの一員とされる人々の強制移送を一時停止するよう命じた。このため、敵性外国人法の適用による強制送還についても流動的な状況となっている。
1 亡命を希望する不法移民が申請手続きを行う間、従前の米国内ではなく治安が悪いメキシコに待機させることを定めた政策。
2 一定の条件を満たすことを条件に1ヵ月当たり4ヵ国合計で3万人を上限に最長2年の合法移民とするプログラム。
3 特定の国からの移民が更新を条件に最大18ヵ月間米国内で合法的に居住することを許可する制度。
4 移民裁判の手続きを待つ間、一部の移民を拘留から解放する制度。