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米国消費者の生命保険ニーズギャップは過去最大-コロナ禍以降、ニーズギャップは拡大-

2024年05月10日

(有村 寛) 保険商品

1――過去最大となった米国生命保険ニーズギャップ

米国における生保・年金のマーケティングに関する代表的な調査・教育機関であるリムラは、2024年4月15日に、米国消費者の生命保険ニーズギャップは過去最大となった、と発表した1
リムラが2024年に実施した最新の調査によれば、生保ニーズギャップがある人(「現行加入状況では不足だと思っている既加入者」、「現在未加入だが加入が必要だと思っている未加入者」の合計)は、全体の42%、18歳から75歳までの約1億200万人に相当するという。

また、表にはないが、「今後1年以内に生保に加入するつもりである」と回答した人は、全体の37%(18歳から75歳までの約9000万人2)に達しており、リムラのニュースリリース上も、重要な点として、強調されている。
 
(図表2)は、ニーズギャップの推移を示したものである。2019年以前は、30%台前半から半ばにかけて推移していたが、新型コロナウイルスの感染拡大を経て2020年に急増して以降、その状況が続いており、パンデミック以降、多くの人が生命保険加入の必要性を認識していることを示している3
 
1 LIMRA ニュースリリース「U.S. Life Insurance Need Gap Grows in 2024」2024年4月15日。
2 前掲注釈1のニュースリリースにおいてLIMRAが公表した数値(生保ニーズギャップがある人42%、18歳から75歳までの約1億200万人に相当)に基づき、筆者が推計した。
3 前掲注釈1にて記載の2024年4月15日付LIMRA ニュースリリースでも、同社が毎年行っている調査では、パンデミック以来、より多くの人が保険加入に大きな関心を示している旨、記載されている。

2――減少傾向にある生保加入率

2――減少傾向にある生保加入率

一方、(図表3)は、米国における生保加入率の推移を示したものである。
年によって多少バラつきはあるが、総じて加入率は減少傾向にあるといえよう4

これらは、米国消費者の多くが生命保険の必要性を認識しつつも、加入に至っていないことを示しているものと考えられる。

リムラでは、米国消費者は、「生命保険について、何にどれだけ加入すればよいか、また、保険料は実際どの位なのかについてほとんどわかっていない。これが、決断できないことや、行動に移せないことに繋がっている。」としている5

「米国消費者の約4分の3が定期保険の保険料について、実際よりも高いと誤解している」、との調査結果もあり、生命保険への誤解や、わかりにくさが、生命保険への加入を阻んでいるものとも考えられる。このあたりの状況については、また改めて整理した上で、別レポートにて紹介したい。世界最大の生保市場を抱える米国の状況については、引き続き注視して参りたい。
 
4 生保加入率については、日本においても、水準の違いはあるものの、2003年88.0%、2006年86.1%、2009年86.7%、2012年86.3%、2015年85.4%、2018年85.6%、2021年84.9%(世帯主加入率、全生保)と、減少傾向にある。(生命保険文化センター「2021年度 生命保険に関する全国実態調査」)
5 前掲注釈1にて記載の2024年4月15日付LIMRA ニュースリリース。

保険研究部   上席研究員 兼 気候変動リサーチセンター 気候変動調査部長

有村 寛(ありむら ひろし)

研究領域:保険

研究・専門分野
保険商品・制度

経歴

【職歴】
1989年 日本生命入社
1990年 ニッセイ基礎研究所 総合研究部
1995年以降、日本生命にて商品開発部、法人営業企画部(商品開発担当)、米国日本生命(出向)、企業保険数理室、ジャパン・アフィニティ・マーケティング(出向)、企業年金G等を経て、2021年 ニッセイ基礎研究所へ、2023年7月より現職

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