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消費者物価(全国25年8月)-コアCPIは9ヵ月ぶりの3%割れ、年末には2%程度まで鈍化する見通し

2025年09月19日

(斎藤 太郎) 日本経済

1.コアCPI上昇率は9ヵ月ぶりの3%割れ

総務省が9月19日に公表した消費者物価指数によると、25年8月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比2.7%(7月:同3.1%)となり、上昇率は前月から0.4ポイント縮小した。事前の市場予想(QUICK集計:2.7%、当社予想も2.7%)通りの結果であった。

電気・都市ガス代の支援策再開によってエネルギー価格の下落率が拡大したこと、食料(生鮮食品を除く総合)の上昇率が鈍化したことがコアCPIを押し下げた。コアCPI上昇率は5月の3.7%をピークに3ヵ月で1.0ポイント縮小した。

生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は前年比3.3%(7月:同3.4%)、総合は前年比2.7%(7月:同3.1%)となった。

コアCPIの内訳をみると、ガソリン(7月:前年比▲1.3%→8月:同0.6%)、灯油(7月:前年比5.2%→8月:同6.2%)の上昇率は高まったが、電気・都市ガス代の支援策再開を受けて、電気代(7月:前年比▲0.7%→8月:同▲7.0%)、都市ガス代(7月:前年比▲0.9%→8月:同▲5.0%)の下落幅が大きく拡大したことから、エネルギー価格の上昇率は7月の前年比▲0.3%から同▲3.3%へと下落率が拡大した。

食料(生鮮食品を除く)は前年比8.0%(7月:同8.3%)と上昇率が前月から0.3ポイント縮小した。食料(生鮮食品を除く)は24年7月の前年比2.6%を底に1年にわたり続いていた上昇率の拡大にようやく歯止めがかかる形となった。

米類(7月:同90.7%→8月:同69.7%)は3ヵ月連続で上昇率が鈍化し、価格水準も2ヵ月連続で低下した。一方、米の関連品目は、すし(弁当)A(7月:前年比7.5%→8月:同5.7%)、すし(外食)A(7月:前年比8.1%→8月:同6.9%)の伸びが鈍化する一方、冷凍米飯(7月:前年比9.7%→8月:同10.1%)、すし(弁当)B(7月:前年比13.4%→8月:同14.0%)は伸びを高めるなど、まちまちな動きとなっている。

外食は前年比4.4%(7月:同4.5%)と上昇率は前月から0.1ポイント縮小した。外食の上昇率が縮小したのは、24年11月以来9ヵ月ぶりとなる。
サービスは前年比1.5%(7月:同1.5%)と上昇率は前月と変わらなかった。携帯電話通信料(7月:前年比11.8%→8月:同13.2%)、高速バス代(7月:前年比1.7%→8月:同2.1%)、タクシー代(7月:前年比0.2%→8月:同0.6%)の上昇率が高まったが、宿泊料(7月:前年比6.0%→8月:同5.3%)、外国パック旅行費(7月:前年比▲1.8%→8月:同▲4.1%)の伸び率が低下した。

コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが▲0.28%(7月:▲0.03%)、食料(除く生鮮食品・外食)が1.77%(7月:1.86%)、その他財が0.45%(7月:0.55%)、サービスが0.76%(7月:0.71%)であった。

2.物価上昇品目数が3ヵ月ぶりに増加

消費者物価指数の調査対象522品目(生鮮食品を除く)を前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、8月の上昇品目数は416品目(7月は414品目)、下落品目数は73品目(7月は74品目)となり、上昇品目数が3ヵ月ぶりに前月から増加した。上昇品目数の割合は79.7%(7月は79.3%)、下落品目数の割合は14.0%(7月は14.2%)、「上昇品目割合」-「下落品目割合」は65.7%(7月は65.1%)であった。

3.コアCPI上昇率は25年末にかけて2%程度まで鈍化する見通し

食料(生鮮食品を除く)は24年7月の前年比2.6%を底に1年にわたって続いていた上昇率の拡大にようやく歯止めがかかった。
帝国データバンクの「食品主要195社価格動向調査」によれば、25年の飲食料品の値上げは2万品目を突破し、24年の12,520品目を大きく上回るペースで増加している。ただし、先行き3ヵ月の値上げ品目数は原材料コストの上昇一服を反映し、25年初め頃をピークに頭打ちとなり、増加ペースは前年並みに落ち着いてきている。人件費や物流費の価格転嫁に加え、物価高が継続したことで企業の値上げに対する抵抗感が薄れていることが値上げ長期化の背景にあることには留意が必要だが、食料(除く生鮮食品)の上昇率はいったんピークアウトした公算が大きい。
 
コアCPI上昇率は、25年9月には前年に電気・都市ガスの補助金政策が実施された裏が出る形でエネルギー価格が上昇に転じることからいったん3%台となるが、10月に再び3%を割り込んだ後、食料の伸び率鈍化が続く中、ガソリンの暫定税率廃止が見込まれる年末には2%程度まで鈍化することが予想される。

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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