プレコンセプションケア5か年計画始動-今後5年で認知度の引き上げと相談支援体制の充実へ、性別や世代を問わず「当事者意識の醸成」が鍵-

2025年07月31日

(乾 愛) 医療

2相談支援の充実(一般相談)
プレコンセプションケアに関する一般相談の充実を図るには、都道府県による広域調整を含め地域格差が生じないよう配慮する必要があり、日中だけでなく夜間休日の対応方法を模索し、対面だけでなく、オンライン・SNS等の活用など利便性に配慮した環境を設定する必要がある。

また、気軽に相談ができるように、自治体が設置する性と健康の相談センター事業に留まらず、地域の医療機関や学内の健康管理センターなどにおいてもプレコンセプションケアに関する相談体制を敷くことが望ましいとされる。また、相談内容が望まない妊娠や自殺企図などを含む深刻な場合には、速やかに自治体の支援に繋げるよう迅速な情報共有が実施される必要がある。さらに、当事者が若年者である場合については、その親がキーパーソンとなる可能性が高いことから、親世代に対して啓発を継続する必要がある。5か年計画では、これらを達成するために、目標として、相談窓口の認知度を100%にすることを目指している。
3相談支援の充実(専門相談)
基礎疾患を有する方や1人目の妊娠で産科合併症を発症した方などに対しても、医療的な専門相談ができるように、外来や薬局などにおいてもプレコンセプションケアに関する情報資料を配付したり、オンラインでの相談体制の整備を進めることが示されている。

さらにプレコンセプションケアに関する専門相談に対応するために、引き続きワーキンググループや学会等で議論を続け、関連する基礎疾患の追加やマニュアルの作成を進める方針も示されている。これらの情報を適宜確認しながら、専門相談が必要な方には適切な相談先につなげていく必要があろう。

4――さいごに

4――さいごに

プレコンセプションケアは、性別を問わず全ての世代の方々にとって重要な概念・取組みであり、社会全体において早急な概念の普及と相談支援体制の充実が求められている。現在の取組み事例をみると、女性の健康施策に偏重していたり、男性に対する情報提供が不足しているなどの課題が散見される。次世代への健康影響や自身の将来への健康影響を考慮した上で展開されるプレコンセプションケアは、当事者とならない方はいない。すべての人々が人生設計する上での必要な知識を持ち、行動選択できるような世の中にしていかなくてはならい。

生活研究部   研究員・ジェロントロジー推進室・ヘルスケアリサーチセンター 兼任

乾 愛(いぬい めぐみ)

研究領域:

研究・専門分野
母子保健・不妊治療・月経随伴症状・プレコンセプションケア等

経歴

【職歴】
2012年 東大阪市入庁(保健師)
2018年 大阪市立大学大学院 看護学研究科 公衆衛生看護学専攻 前期博士課程修了(看護学修士)
2019年 ニッセイ基礎研究所 入社

・大阪市立大学(現:大阪公立大学)研究員(2019年~)
・東京医科歯科大学(現:東京科学大学)非常勤講師(2023年~)
・文京区子ども子育て会議委員(2024年~)

【資格】
看護師・保健師・養護教諭一種・第一種衛生管理者

【加入団体等】
日本公衆衛生学会・日本公衆衛生看護学会・日本疫学会

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