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鉱工業生産25年5月-4-6月期は2四半期連続減産の可能性が高まる

2025年06月30日

(斎藤 太郎) 日本経済

1.5月の生産は市場予想、予測指数を大きく下回る

経済産業省が6月30日に公表した鉱工業指数によると、25年5月の鉱工業生産指数は前月比0.5%(4月:同▲1.1%)と2ヵ月ぶりに上昇したが、事前の市場予想(QUICK集計:前月比3.5%、当社予想は同2.6%)、先月時点の予測指数の伸び(前月比9.0%)を大きく下回る結果となった。出荷指数は前月比2.2%と2ヵ月連続の上昇、在庫指数は前月比▲1.9%と2ヵ月連続の低下となった。
5月の生産を業種別に見ると、4月に前月比▲8.7%の急低下となった生産用機械が同5.6%の高い伸びとなり、自動車部品メーカーの爆発事故の影響で3月(前月比▲5.9%)、4月(同▲0.9%)と落ち込んだ自動車が同2.5%と3ヵ月ぶりに上昇した。一方、自動車を除く輸送機械が航空機用発動機部品などを中心に前月比▲16.3%と急速に落ち込んだほか、無機・有機化学(同▲5.1%)、電子部品・デバイス(同▲3.0%)も大きく落ち込んだことが生産全体を押し下げた。
財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は25年1-3月期の前期比▲2.4%の後、4月が前月比▲3.0%、5月が同7.7%となった。また、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は25年1-3月期の前期比1.1%の後、4月が前月比▲1.3%、5月が同▲0.2%となった。25年4、5月の平均を1-3月期と比較すると、資本財(除く輸送機械)は1.5%高いが、建設財は▲2.4%低い。

25年1-3月期のGDP統計の設備投資は前期比1.1%と4四半期連続で増加し、24年10-12月期の同0.6%から伸びを高めた。高水準の企業収益を背景に設備投資は回復が続いているが、米国の関税政策を巡る不確実性の高まりから、企業の投資行動は今後慎重化することが見込まれる。

消費財出荷指数は25年1-3月期の前期比3.8%の後、4月が前月比▲2.0%、5月が同5.0%となった。5月は耐久消費財が前月比2.3%(4月:同2.8%)、非耐久消費財が前月比1.2%(5月:同▲4.0%)となった。25年4、5月平均の消費財出荷指数は1-3月期比で0.1%とほぼ横ばいとなっている。

GDP統計の民間消費は、24年10-12月期、25年1-3月期ともに前期比0.1%の低い伸びにとどまった。物価高による下押し圧力が高い状態が続く中、個人消費は横ばい圏の動きが続いている。

2.4-6月期は2四半期減産の可能性が高まる

製造工業生産予測指数は、25年6月が前月比0.3%、7月が同▲0.7%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(5月)、予測修正率(6月)はそれぞれ▲5.6%、▲2.6%であった。

予測指数を業種別にみると、6月は電気・情報通信機械(前月比15.7%)、石油製品(同10.8%)、7月は電子部品・デバイス(同11.7%)が前月比二桁の高い伸びとなっているが、米国向け輸出に対して25%の追加関税が課せられた自動車を含む輸送機械は6月(同▲3.4%)、7月(同▲4.4%)と2ヵ月連続の減産計画で、全体ではほぼ横ばいとなっている。
25年5月の生産指数を6月の予測指数で先延ばしすると、25年4-6月期は前期比0.2%となるが、実際の生産の伸びが計画を下回る傾向があることを踏まえると、4-6月期の生産は1-3月期(前期比▲0.3%)に続き前期比マイナスとなる公算が大きい。

減産幅は小さいが、米国の関税引き上げに対して、自動車メーカーを中心に価格の引き下げによって輸出数量の落ち込みが緩和されていることが影響していると考えられる。数量ベースの生産の落ち込みは小さいものの、大幅な値下げによって国内企業の収益が大きく悪化している可能性が高いことには注意が必要だろう。

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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