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英国雇用関連統計(25年4月)-賃金上昇率は前年比で高止まり

2025年05月14日

(高山 武士) 欧州経済

1.結果の概要:週平均賃金は前年比5%台半ばで横ばい圏

5月13日、英国国家統計局(ONS)は雇用関連統計を公表し、結果は以下の通りとなった1
 

【4月】
失業保険申請件数2前月(172.09万件)から0.53万件増の172.62万件となった(図表1)。
申請件数の雇用者数に対する割合は4.5%となり、前月(同4.5%)から横ばいだった。
給与所得者数3前月(3033.4万人)から3.3万人減の3030.2万人となった。増減数は前月(▲4.7万人)から減少幅が縮小し、市場予想4(▲3.2万人)をやや下回った。

【3月(25年1-3月の3か月平均)】
失業率は4.5%で前月(4.4%)からやや上昇、市場予想(4.5%)と一致した(図表1)。
就業者は3397.5万人で3か月前の3386.3万人から11.2万人増加した。増減数は市場予想(11.5万人)を下回り、前月(20.6万人)から縮小した。
週平均賃金は前年比5.5%で前月(5.7%)から低下、市場予想(5.2%)を上回った(図表2)。

 
1 労働力調査ベースの統計については、回答率の低下を受け、ONSでは開発中の公式統計という位置付けで公表されている。
2 求職者手当(JSA:Jobseekerʼs Allowance)、国民保険給付(National Insurance credits)を受けている者に加えて、主に失業理由でユニバーサルクレジット(UC)を受給している者の推計数の合算。なお、UCはJSAより幅広い求職手当てであり、失業者数を示す統計としては過大評価している可能性がある。このため、ONSは開発中の公式統計という位置付けで公表している。
3 歳入関税庁(HRMC)の源泉徴収情報を利用した統計。直近データは約85%のデータから推計。
4 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。

2.結果の詳細:給与所得者の給与(中央値)伸び率は6%台に上昇

まず4月のデータとして公表されている求人数および給与所得者数を確認すると、求人数が25年2-4月の平均で76.1万件となった。ここ数か月80万件前後で横ばい推移していたが、2か月連続の80万人割れとなった(図表3)。なお、4月単月の求人数は76.6万件だった5

給与所得者データは、4月の給与所得者数(速報値)が前月差で3.3万人減となり3か月連続での減少となった(なお、過去の数値の改定は3月▲7.8→▲4.7万人、2月:▲0.8→▲2.7万人)。産業別には専門・技術サービス、建設、卸・小売業で減少が目立つ一方、事務・支援サービス、保健・社会事業サービスでは増加が目立った。4月の給与額(中央値)伸び率は前年同月比6.4%となり、3月(5.9%、改定前は5.5%)から大幅に上昇した。
労働力調査ベースの数値は、1-3月期の失業率で4.5%となり、前期の4.4%からやや上昇した(前掲図表1)。就業者が減少し、失業者と非労働力人口が増加した。労働参加率は63.5%でほぼ横ばい推移となった。
労働時間は31.8時間(前年差▲0.2時間)、フルタイム労働者で36.5時間(同▲0.1時間)となった(前掲図表2)。名目賃金は前年比で5.5%となり、前月(5.7%)からやや低下した。ボーナスを除く定期賃金伸び率は前年比5.6%と前月(5.9%)から低下、市場予想(5.7%)も下回った。同数値を3か月前比年率で見た賃金上昇の勢いは5.1%(前月6.0%)と減速した。なお、民間部門の賃金上昇率が前年比5.4%(前月5.7%、ボーナス除きは5.6%)、公的部門が同5.4%(前月4.8%、ボーナス除きは5.5%)で民間部門の伸びは減速、公的部門は大幅に上昇した(図表5)。実質ベースの伸び率は、ボーナス含みで前年比1.7%(前月2.0%)、ボーナスを除きで同1.8%(前月2.1%)といずれも減速した。

処遇改善を求めたストライキは、3月は件数ベースで55件(2月60件)、労働損失日数で5.5万日(2月5.5万日)となっており、低水準での推移が続いている(図表6)。
 
5 3か月平均のデータは季節調整値だが、単月データは未季節調整値のため季節性が除去されていないため留意が必要。

経済研究部   主任研究員

高山 武士(たかやま たけし)

研究領域:経済

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴

【職歴】
 2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
 2009年 日本経済研究センターへ派遣
 2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
 2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
 2014年 同、米国経済担当
 2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
 2020年 ニッセイ基礎研究所
 2023年より現職

 ・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
  アドバイザー(2024年4月~)

【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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