若い世代が求めている「出会い方」とは?-全国からの20代人口集中が強まる東京都の若者の声を知る

基礎研REPORT(冊子版)5月号[vol.338]

2025年05月09日

(天野 馨南子) 子ども・子育て支援

【東京の『若者』の声の重要性】

地方における20代人口の就職期の流出が地方の婚姻減から出生減へと連鎖し、統計上、もはや社会減が自然減に直結ともいえる人口動態にある。一方で現在、東京都は「20代人口の就職聖地」として全国の若者人流のデッドエンドとなっており、その東京都の若者の考え方が、今後の日本の就職、結婚、出産のトレンドを築いていくことが予想される。ただ、東京都は長く住み慣れた地元を離れ、食・言語などを含む「普通」が異なる若者が就職期に集うことによって形成される「日本一の20代多民族国家」ともなっている。つまり、若者数が日本一とはいえ、新天地で新たな社会人生活を始める20代の若者たちの出会いが、そう簡単には発生しないことが想像に難くない。そこで、令和時代に東京都に集う若者たちが一体どのような出会い方を求めているのか、興味深いデータを紹介したい。

【デジジェネ世代の出会い方】

東京在勤の若者が交際に関して求める出会い方の1位は「友人・知人からの紹介」で、過半数(54%)の支持を得た[図表]。人口動態調査を分析すると、初婚同士婚では「同年齢婚」が群を抜いて多く(23年・22%、5万件)、夫1歳上(3万件)、妻1歳上(3万件)の結婚が続く(1歳差までの結婚で全体の48%)。つまり、お互いが受けてきた教育、そして急速に進むデジタル化の中で、情報収集力が近似しているほぼ同年齢の出会いが最も成婚につながっているという状態ともいえる。このため、友人・知人からの紹介といった「自分と近い年齢の人を紹介してくれる可能性が高そうな出会い方」に期待するのは、妥当な考えともいえる。しかし、地方から就職で20代前半を主として東京に集まる*1男女の半数が支持する友人・知人経由の出会いを都内で短期に得ることはかなり難しい。先述のように、東京都は20代の「多民族国家」化が進んでいる場所だからである。そういった中で、出会いにおいてあればよいと思う2位が「信頼性が高くリーズナブル*1なマッチングアプリ(以下、アプリ)」43%となっていることも納得感が強い。就職で上京し公私ともに大きな環境変化で多用な中、場所と時間を選ばず出会いを探せるメリットは極めて大きい(特に夜勤者等)。ただ、「信頼性が高く」という条件は非常に重要で、デジタルジェネレーションの男女にとってアプリの相手情報の信頼度の付加価値は高い。一般的に民間アプリとして知られる媒体は「独身証明書」という自治体が発行している公的証明書の提出を必要としない(ゆえに独身証明書の存在を知らない男女も多い)。つまり、スマホの向こう側に並ぶ相手が既婚であるかどうかの確認をシステム上、確信出来ない状態が主流である。こういった中で、安心安全な出会いを強く求める声が若者からあがっている。これに関して、「身バレリスクが非常に高い」という意味で、都会より地方のほうが安全かもしれないという地方の若者ユーザーからの声が出てきている。言い換えれば都会では、人口の多さに紛れ身バレせず逃げてしまう懸念を感じるがゆえに、より「安心安全な出会い」を強く求める声が出てくるのだろう。
 
*1 24年の東京都の社会増人口は20代:10代=85:15。20代人口のうち7割以上が20代前半人口。
*2 東京の小規模企業割合は80%

【出会った先の『雇用』問題】

以上の東商の24年調査の結果をそのまま地方に転用するには、大きな問題がある。それは女性の仕事問題だ。地方の未婚化対策議論では「できれば地元男性と地元外女性の出会い推進」という「男性は動かず、女性に動いてもらう」案が少なからず出る。しかしそもそも、東京への若者の流出は雇用が原因であり、24年に社会減となった40道府県合計において、男性の1.3倍もの女性が流出減していることを考えると、地方はジェンダーレス雇用を進め、地元に雇用で若い女性が定着できるようにすることが出会い創出の第一歩である。にもかかわらず、「雇用は特に用意しないが、県外女性の結婚移住に期待」という考えは、「私の仕事がない以上、彼との結婚は考えられない」という結論につながりかねない。

若者の結婚希望は高止まりのまま、未婚化が進む日本。エリアの人流構造とその原因のエビデンスをしっかり理解した上で、若者の出会いを生み出せる政策が検討されることを期待したい。

生活研究部   人口動態シニアリサーチャー

天野 馨南子(あまの かなこ)

研究領域:暮らし

研究・専門分野
人口動態に関する諸問題-(特に)少子化対策・東京一極集中・女性活躍推進

経歴

プロフィール
1995年:日本生命保険相互会社 入社
1999年:株式会社ニッセイ基礎研究所 出向


【委員歴/ご依頼順(現職優先)】

1.政府
・【総務省統計局】
「令和7年国勢調査有識者会議」構成員(2021年~)
・【こども家庭庁】
「若い世代視点からのライフデザインに関する検討会」構成員(2025年度)
「若い世代の描くライフデザインや出会いを考えるワーキンググループ」構成員(2024~2025年度)
「令和5年度「地域少子化対策に関する調査事業」委員会委員」(2023年度)
・【内閣府特命担当大臣(少子化対策)主宰】
「少子化社会対策大綱の推進に関する検討会」構成員(2021年~2022年)
「結婚の希望を叶える環境整備に向けた企業・団体等の取組に関する検討会」構成メンバー(2016年)
・【内閣府男女共同参画局】
「人生100年時代の結婚と家族に関する研究会」構成員(2021年~2022年)
・【内閣府】
「令和3年度結婚支援ボランティア等育成モデルプログラム開発調査 企画委員会 委員」(内閣府委託事業)(2021年~2022年)
「地域少子化対策重点推進交付金」事業選定審査員(2017年~2018年)
「地域少子化対策強化事業の調査研究・効果検証と優良事例調査 企画・分析会議委員(2016年~2017年)

2.自治体
・【富山県】
「県政エグゼクティブアドバイザー」(2023年~)
「富山県子育て支援・少子化対策県民会議 委員」(2022年~)
「富山県成長戦略会議真の幸せ(ウェルビーイング)戦略プロジェクトチーム 少子化対策・子育て支援専門部会委員」(2022年)
・【高知県】
「元気な未来創造戦略推進委員会 委員」(2024年度~)
「中山間地域再興ビジョン検討委員会 委員」(2023年度)
・【三重県】
「人口減少対策有識者会議 有識者委員」(2023年度~)
・【愛知県豊田市】
「豊田市総合計画推進会議 有識者委員」(2025年度~)
・【石川県】
「少子化対策アドバイザー」(2023年度)
・【長野県伊那市】
「伊那市新産業技術推進協議会委員/分野:全般」(2020年~2021年)
・【佐賀県健康福祉部男女参画・こども局こども未来課】
「子育てし大県“さが”データ活用アドバイザー」(2021年)
・【愛媛県松山市】
「まつやま人口減少対策推進会議」専門部会・結婚支援ビッグデータ・オープンデータ活用研究会メンバー(2017年度~2018年度)

3.民間団体
・【東京商工会議所】
東京における少子化対策専門委員会 学識者委員(2023年~)
・【愛媛県法人会連合会】
えひめ結婚支援センターアドバイザー委員(2016年度~)
・【公益財団法人東北活性化研究センター】
「人口の社会減と女性の定着」に関する情報発信/普及啓発検討委員会 委員長(2021年~)
「人口の社会減と女性の定着」に関する意識調査/検討委員会 委員長(2020年~2021年)
・【中外製薬株式会社】
「ヒト由来試料を用いた研究に関する倫理委員会(通称:研究倫理委員会) 委員」(2020年~)
・【主宰研究会】
地方女性活性化研究会(2020年~)


日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)
日本労務学会 会員
日本性差医学・医療学会 会員
日本保険学会 会員
性差医療情報ネットワーク 会員
JADPメンタル心理カウンセラー
JADP上級心理カウンセラー

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