患者数:入院は減少、外来は増加-2023年の「患者調査」にコロナ禍の影響はどうあらわれたか?

2025年04月15日

(篠原 拓也) 保険計理

5――平均在院日数

さらに、入院の状況として、退院患者の平均在院日数を見てみよう。
1|平均在院日数 : 2023年は以前からの減少傾向に戻った
近年、退院した患者の平均在院日数は、年々減少してきた。しかし、2020年には増加に転じた。その要因として、コロナ禍の影響(比較的軽症の患者が受療を控えたり、予定手術が延期となり事前の入院がなくなったりした結果、短期入院が減少し、長期入院の割合が高まったことが考えられる)と、調査票の元号記載の影響8が考えられた。

2023年は、コロナ禍の影響が薄れ、調査票の元号記載の影響が消失したことで、以前からの減少傾向に戻ったものとみられる。
 
8 注記4参照。
2|2023年は各年齢層とも平均在院日数が減少した
続いて、平均在院日数を、年齢層別に見てみる。14歳以下、15~34歳、35~64歳、65歳以上の4つの年齢層のいずれでも、2020年の増加の反動で、2023年は減少している。
3|神経系の疾患は、平均在院日数の増加が続いた
つぎに、平均在院日数を、傷病分類別に見てみる。前章で見た入院受療率の上位5つの疾病について推移を見ていく。精神及び行動の障害は290.4日でほぼ横這いで推移した。神経系の疾患は、1996年以降で最も多い93.3日となった。循環器系の疾患、損傷,中毒及びその他の外因の影響、新生物<腫瘍>は、2020年のコロナ禍における増加の反動で、2023年は減少した。

6――おわりに (私見)

6――おわりに (私見)

以上、見てきたとおり、2023年の患者調査の結果には、入院ではコロナ禍の影響が残る一方、外来ではその影響が消失する形となっている。

患者調査は、医療計画の策定や、診療報酬改定の検討などの医療行政を進める際に、基礎データとして活用されることが多い。また、社会保障審議会などで、医療制度改正の議論の前提としてもよく用いられる。さらに、民間企業では、製薬メーカーで新薬の市場規模推計調査に用いたり、保険会社で医療保険等の保険料や準備金計算の基礎率として利用したりしている。こうした行政や民間企業での患者調査の活用状況を踏まえた場合、データに含まれているコロナ禍の影響をどのように取り扱うべきか? ― 今後、そのデータの活用にあたって、さまざまな検討を要するものと考えられる。

引き続き、患者調査等を通じて、受療動向のウォッチを続けていくこととしたい。

(参考資料)
 
「患者調査」(厚生労働省)
 
「総患者数の推移(現行推計-新推計(案)),傷病大分類別」(第2回 患者調査における「平均診療間
  隔」及び「総患者数」の算出方法等の見直しに関するワーキンググループ, 資料2-2-1, 2021年8月6日)
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