中期経済見通し(2024~2034年度)

2024年10月11日

(経済研究部)

■要旨
 
  1. 世界の実質GDP成長率は、長期化する高インフレと金融引き締めの影響で2023年には3%台前半まで減速した。2024年はインフレ率が低下し、減速に歯止めがかかるものの、その後は少子高齢化を背景とした新興国の成長鈍化により、予測期間末には2%台後半まで低下することが予想される。
     
  2. 日本の2034年度までの10年間の実質GDP成長率は平均1.1%と予想する。潜在成長率は足もとのゼロ%台後半から2020年代後半に1%程度まで高まった後、少子高齢化の更なる進展に伴い2030年度前半にゼロ%台後半まで鈍化することが見込まれる。
     
  3. 消費者物価上昇率(除く生鮮食品)は、2025年度に1.8%と4年ぶりに2%を割り込んだ後、1%台後半で推移し、10年間の平均で1.7%と予想する。「物価安定の目標」の2%を維持することはできないが、再びデフレに戻ることはないだろう。
     
  4. 日本銀行は、「物価目標の持続的・安定的な達成についての確度が高まっている」との理由で段階的に利上げを実施し、政策金利は2027年度に1.25%まで引き上げられるだろう。長期金利は、政策金利の引き上げに加え、長期国債の買い入れ減額の継続が上昇圧力になることから、2034年度には2%を若干下回る水準まで上昇すると予想する。
■目次

1.世界経済は回復が進むものの、不確実性は依然として大きい
  ・ディスインフレが進み、欧米中銀も利下げサイクルを開始
  ・製造業景況感や消費者景況感は弱含み
  ・経済を取り巻く不確実性は依然として大きい
  ・世界成長率は中期的に緩やかに減速
2.海外経済の見通し
  ・米国経済-累積的な金融引締めの影響により、当面は潜在成長率を下回る成長が持続
  ・ユーロ圏経済-第二次フォンデアライエン体制が始動
  ・中国経済-今後10年にわたり成長率は引き続き鈍化、構造改革は正念場に
  ・インド経済-人口ボーナス期の経済発展の好循環により6%台の高成長軌道を保つ
  ・ASEAN経済-域内外との連携強化により高い成長ポテンシャルを発揮
3.日本経済の見通し
  ・民間消費、住宅投資は依然としてコロナ禍前の水準を下回る
  ・労働時間の減少が労働投入量を押し下げ
  ・「金利のある世界」復活で、家計の利子所得は増加へ
  ・潜在成長率は1%程度まで回復した後、徐々に低下
  ・今後10年間の実質GDP成長率は平均1.1%を予想
  ・今後10年間の消費者物価上昇率は平均1.7%を予想
  ・インバウンド需要はコロナ禍前を上回る
  ・基礎的財政収支は2034年度まで黒字化せず
  ・経常収支は黒字幅の縮小傾向が続く
4.金融市場の見通し
  ・日本の金融政策と金利
  ・米国の金融政策と金利
  ・ユーロ圏の金融政策と金利
  ・ドル円レート
5.代替シナリオ
  ・楽観シナリオ
  ・悲観シナリオ
  ・シナリオ別の金融市場見通し