公的年金の制度見直しは一日にしてならず

2024年10月03日

公的年金の制度は、長い年月にわたって積み上げられて来たため、現代の視点のみで見ると、不合理に感じられるものも少なくない。モデル世帯が一般的な現状から乖離しているのは、紛れもない事実だろう。国民年金の第3号被保険者制度も、今でこそ専業主婦(夫)への優遇策と批判されるが、導入時点では共働き世帯の比率は高くなかった。遺族年金受給の男女差や在職老齢年金など、一度ゼロクリアし抜本的に見直せたらと思われるものが複数ある。
 
しかし、現在の制度に基づいて給付等を受けている受給者もあるし、制度に対応した働き方やライフプランを計画している加入者がいる以上、連続性のない制度の切換えは混乱を招く。そのために経過措置などが設けられるので、制度の複雑化はやむを得ない。長い期間にわたって存続する制度で、極力、不公平感をなくすための努力は必要だが、完全に差を是正することは容易でない。
 
受給開始年齢の引上げや保険料納付期間の延長なども、計画は描けるが、実際には段階的にしか進められない。厚生年金の受給開始年齢の繰下げも、男性では完了しているが、一部の女性では新規に特別支給の老齢厚生年金を受給開始するといった例もある。少子高齢化がさらに進むと目される以上、現在より将来の制度や状況は、もっと厳しくならざるを得ないという覚悟が必要である。
 
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