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iDeCo(個人型確定拠出年金)の制度改正と投資信託市場
2024年06月05日
(北村 智紀)
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2001年に始まったiDeCo(個人型確定拠出年金)は、何度かの制度改正を経て、老後に向けた資産形成を行う制度として魅力的な存在となっている。特に、2016年の法改正により加入者範囲が公務員などを含む原則60歳未満の国民年金被保険者まで広がり
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、多くの人が利用できる老後資産形成制度となった。
2022年には加入可能年齢が拡大され、会社員は原則65歳まで加入できるようになった。企業型DCとiDeCoの同時加入要件も緩和され、一定の条件のもとで、企業型DCに加入している人がiDeCoにも加入できるようになった。さらには、年金の受け取り開始可能年齢が75歳まで拡大されるなど、多様な人々がそれぞれの事情を鑑みてiDeCoを利用できるようになった
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。その結果iDeCoの加入者数は、2016年の約26万人から、2023年には約300万人に拡大した
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。
さらに2024年12月には、確定給付型企業年金に加入する会社員や公務員がiDeCoに拠出できる限度額が、現行の月額1.2万円から月額2.0万円へと引き上げられる
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。これにより、iDeCoに投資される金額がさらに増加すると予想される。
iDeCoは自分で掛金を拠出し運用する年金制度である。運用の中心は、分散投資が可能で長期運用にも向く投資信託(投信)であろう。図表1は2016年(加入者範囲が拡大された年)の日別の平均設定額(投信への資金流入額)である(分析対象ファンド数は約3,400本)。データは株式会社金融データソリューションズの日次データで
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、ETFを除く国内外の全ファンドを対象としたものである。純資産10億円未満のファンドは除外している。
図のX軸は月のうちの日を表している。左側は月初、右側が月末に相当する。Y軸は日毎の設定額(資金流入額:単位百万円)である。一般ファンド(青点線)と一般・DC共用ファンド(オレンジ実線、企業型DCも含む)の平均設定額は2~3千万円程度であり、月を通して概ね平準化しており、目立った定期的な買い付けはない。一方、DC専用ファンド(緑破線、企業型DCも含む)の平均設定額は、月半ばで1千万円程度と一般ファンドよりも低い。ただし、月初や月末においては設定額が増えており、特に月末の設定額は一般ファンドを上回っていて、定期的な積み立てによる掛金拠出を示唆している。
これに対して、図表2は2023年の平均設定額である(ファンド数は約3,900本)。一般・DC共用ファンドは、月半ばで6千万円程度と、一般ファンドを上回る設定額がある。特に月初では平均1億円程度の大きな設定額がある。これらのファンドの中には、国内や海外のインデックス・ファンドやアクティブ・ファンド、毎月分配型ファンドがある。DC専用ファンドも、月半ばで一般ファンドと同程度の設定額があり、特に月初や月末では設定額は増えており、一般ファンドを大きく上回っている。ここでも定期的な積み立てによる掛金拠出が示唆される。これらのファンドの中には、国内や海外のインデックス・ファンド、バランス型ファンド、ターゲットイヤー型ファンドがある。
このように投信市場におけるDC投資家の存在感は高まっている。しかし、iDeCoや特に資産運用に関心がない層も多いように思われ、老後に向けた資産形成の促進に課題がある。また、DC関連ファンドの資金流入が月初・月末に偏っていることも気になる。資産規模が大きいファンドであれば問題はないだろうが、小さいファンドでは何らかの影響があるかもしれない。
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厚生労働省(2016)「2016年の制度改正」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/kyoshutsu/2016kaisei.html
2
厚生労働省(2020)「2020年の制度改正」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/kyoshutsu/2020kaisei.html
3
厚生労働省(2023)「iDeCoの加入者が300万人を突破しました!」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_34784.html
4
厚生労働省(2024)「確定拠出年金の拠出限度額」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/kyoshutsu/taishousha.html
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データは科学研究費19K01766の助成によるものである
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武蔵大学 経済学部
北村 智紀
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