2|オーナーによる修繕・点検時期のセルフチェック
計画修繕の必要性を理解した上でまず必要なことは、所有している賃貸住宅の状態を確認することである。それによって、直ちに修繕を実施する必要があるかどうか判断することができる。このような、修繕の必要性を判断する建物の診断は、そうした知識や技術のある専門家や専門業者でなければ正確に行うことはできない。
しかし、専門家や専門業者に依頼する前に、オーナー自ら専門家に相談すべきかどうか判断に迷うこともあろう。そのようなときまずはオーナー自ら、所有する賃貸住宅の状態を確認してほしい。言わばセルフチェックである。その際、活用できるのが、国土交通省がウェブサイト上で公開している、「賃貸住宅の修繕・点検時期セルフチェック」である。
これは、ウェブサイト上で質問に回答していくと、すでに不具合が生じているため専門家に相談して修繕を実施すべき、あるいは、不具合は生じていないものの点検時期を迎えているため、点検すべきといった診断結果が示されるものである。
具体的には、まず賃貸住宅の建築年を入力し、構造を木造、鉄骨造、RC造から選択する。次に、屋上、雨樋、外壁、ベランダ、階段廊下、電気設備、基礎(土台)、給湯・風呂釜、外部建具(玄関扉、雨戸等)、給水設備・排水管、水回り(台所、風呂、トイレ)の各部位毎に、劣化・不具合の症状があるかを、「はい」か「いいえ」で回答していく。症状の事例写真が複数掲載されていることから、専門知識がなくても、実際にそのような症状があるかどうかを確認することで、簡単に診断することができる。診断結果は次図のように示され、PDFでダウンロードして保存することができる(図表5)。
このように、オーナーが簡易に診断できるツールを国土交通省が制作したのは、これまで説明してきたように賃貸住宅オーナーに修繕の必要性を理解してもらい、計画的な修繕実施を普及させることで、良質な賃貸住宅ストックの形成を図るためである。
従来、ウェブサイトから診断ツールのファイルをパソコンにダウンロードして利用する形式であったが、2022年度の国土交通省の補助事業
8により、より使いやすくするようニッセイ基礎研究所が改訂を行った
9。オーナーが現場に出向き、目視で状態を確認しながらスマートフォンやタブレットで入力できるよう、ウェブアプリ版にしたものである。
併せて、スマートフォン等を利用しないオーナーも診断できるように、手書き用のチェックシートも作成し、同じウェブサイトからダウンロードしてプリントアウトし、そこに記載された質問に回答していくことで診断結果を得られるようにした。
「賃貸住宅の修繕・点検時期セルフチェック」のウェブサイトには、その他、修繕やリフォームなどの相談先窓口の案内、計画修繕と併せて実施するリフォームなどに対する補助金や税制、融資など制度の紹介、関連するガイドブックや調査報告書など計画修繕に役立つ情報も掲載している。
本レポートを目にして計画修繕に取り組もうと思った賃貸住宅オーナーには、是非、このツールを利用してセルフチェックを行ってほしい。その結果を踏まえて、所有する賃貸住宅の管理業者や施工業者、あるいはウェブサイトで案内している相談先窓口に相談してみてはいかがであろうか。
「賃貸住宅の修繕・点検時期セルフチェック」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/selfchecksheet/