日銀の政策修正で変わるDB運営負担

2023年09月05日

イールドカーブの水準は、DB運営の企業の負担を左右する一要素となる。イールドカーブが上方シフトすれば、退職給付債務の減少を通じて、会計上の積み立て不足を抑制できる可能性は高まり、年金財政上においても30年国債の応募者利回りの上昇によって、非継続基準達成のハードルは下がることになる。
 
金利上昇は為替や株式市場への作用を通じて年金運用にも影響を及ぼすため、イールドカーブの上方シフトが一概にDB運営にプラスとは言えない面もあるが、金利水準が高ければ、国内債券に高い保険機能を期待できることも勘案すると、DB運営上は、ある程度高い金利環境が継続することが望ましい。
 
こうした視点に立つと、日銀が7月に決定した10年国債金利の実質的な上限を引き上げるイールドカーブ・コントロールの修正は、DB運営に多大な負担を迫った超低金利環境の是正を可能にした点で、DB運営をサポートする政策修正であったと言える。
 
より顕著なDB運営の負担軽減のためには、もう一段の適度な金利水準の上方シフトが必要になるが、その前提となるのが金融緩和政策の正常化だ。企業年金の多様な選択肢を確保する上でも、金融緩和の正常化に踏み出せる経済環境の創出が期待される。
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