3|
保険・年金分野におけるグリーンウォッシングの例あるいはおそれ
様々な段階においてグリーンウォッシングが存在することをみるため、実際の事例あるいは容易に想像できる状況の例を、以下挙げてみる。
〇 ある保険会社は「新規契約があるごとに植樹する」と宣言した。しかし同時に新規の化石燃料プロジェクトへの投資も行っていた。潜在的な顧客が、「この保険会社に加入することで、環境問題に積極的に貢献できる」と信じ込まされるのではないか。
(資産運用方針に関するもの)
〇 ある年金基金は、「責任投資原則」に署名しているが、一方でSFDRにもとづくPAI(主な悪影響)の考慮のことなど知らないと言っている。
(年金基金の資産運用の外部委託)
〇 ある保険会社は、テレビ番組を通じて、自社のサステナビリティに関する認定資格を語り、さらなるサステナビリティに配慮した行動を強調し、サステナビリティに特化した慈善事業の基金と連携を深めると語った。しかしその一方では、新規の油田・ガス田・化石燃料を開発する大企業の保険を引き受けていた。こうした企業理念の公表と実際の保険引受行動の間の齟齬はグリーンウォッシングとなりうるのではないか。
(保険引受行動)
〇 PAI(主な悪影響)の計算に不明確な箇所を発見した。これはグリーンッウォッシングか?
(法に基づく報告の信頼性)
〇 洪水や自然災害の影響を受けない、というだけのことでサステナビリティリーダーとかESG準拠と評価されている会社や商品がある。
((何も知らない?)第三者機関の評価)
〇 一部の保険会社は保険販売上なんの効力もないESGラベルを使用している。そして投資先の詳細なリストを開示することなく、ESGラベル付きサービスの大部分を提供していると言っている。消費者はこの保険会社に投資すれば大丈夫だと誤解するだろう。実際にはどんな投資か不明。
(規制にないラベルの信頼性)
〇 選択肢がひとしかないのに、複数選択肢商品だと言っている。
〇 ある国でSFDR準拠の実態を調査してみると、サステナビリティ情報は顧客の理解のために充分ではなく、監督上も不充分なものであった。これはグリ-ンウォシングにつながる。保険会社は一般に個々の商品に関するサステナビリティ関連情報は開示せず、会社レベルの漠然としたものしか提供しない。これではサステナビリティ関連投資の顧客の理解はすすまないだろうとわかった。
〇 EIOPAがSFDR関連の調査をおこなったところ、以下のようグリーンウォッシングの疑いある事例があった。
・投資型保険商品の投資オプション情報を見つけ出すのが難しい
・関係ない情報が多すぎる
・緑色など消費者に誤解を与える色の過度な使用
(以上3点は、開示に関するもの)
〇「グリーン」とか「持続可能」といった用語が、SFDR関連の開示のない投資商品を説明する時に使われている。
(広告・宣伝における用語の使用)
〇 保険商品の広告とともに契約前提供情報を調査したところ、ソーシャルメディア上で、海洋生態系の保護とプラスチックの削減に貢献し、ビジュアル的にもいかにもサステナビリティを重視するようなものであるものがあった。保険監督局はこうした表示をやめさせた。
(広告媒体の選択)
3――今後のスケジュール等