2022年の為替介入を振り返る~結局、効果はあったのか?

2023年06月02日

(上野 剛志) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

■要旨
 
  1. 昨年、政府・日銀はドル円が1ドル145円を超えた9月22日に24年ぶりとなる円買い為替介入に踏み切った。150円を超えた10月下旬にも2度介入が実施された結果、介入は合計3回、総額9.2兆円規模となった。
     
  2. 改めて振り返ってみると、昨年の介入には政府・日銀が円安抑制効果を高めるために施したとみられる工夫が随所にうかがえる。具体的には、「徹底した情報管理」、「大規模・ピンポイントでの実施」、「介入余力の演出」、「米政府の容認獲得」だ。
     
  3. 当時のドル円の動きを見ると、10月下旬の2度の介入の後に円安進行が一服し、11月中旬からは円高基調に転換している。ただし、この円高転換の主因は介入ではなく、日米金融政策の影響、特に米金融政策に対する市場の観測の変化であると考えられる。11月上旬に公表された米CPIが予想以上に鈍化したことなどから利上げ加速観測がやや後退し、日米金利差縮小を通じて円高ドル安に寄与した。また、12月下旬に日銀が突如長期金利操作目標の許容上限を引き上げ、実質的な利上げと受け止められたことも円高に働いた。もともと、ファンダメンタルズによって裏付けられた為替のトレンドを政府・日銀の単独介入によって反転させることは難しいと考えられる。
     
  4. しかし、介入の効果が無かったわけではない。円安のトレンドを反転させたわけではないにせよ、昨年半ばから進んでいた投機的な円売りが介入によって抑制され、5円程度円安の進行を抑制した可能性が高いと考えられる。
     
  5. 今後も中長期的には再び急速な円安・円高局面が発生し、政府・日銀が介入に踏み切らざるを得なくなる場面があるだろう。その際には再び政府・日銀の手腕が問われることになる。

 
■目次

1. トピック:2022年の為替介入を振り返る
  ・昨年は24年ぶりの円買い介入を実施
  ・円安抑制効果は一定程度うかがわれる
2. 日銀金融政策(5月)
  ・(日銀)現状維持(開催なし)
  ・今後の予想
3. 金融市場(5月)の振り返りと予測表
  ・10年国債利回り
  ・ドル円レート
  ・ユーロドルレート

経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志(うえの つよし)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴

・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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