「24年ぶりの円買い介入」、その効果と限界をどう見るか?

2022年10月07日

(上野 剛志) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

■要旨
 
  1. 9月22日に政府が24年ぶりの円買い為替介入を実施してから、約2週間が経過した。
     
  2. 介入の効果については、一定の効果があったと考えられる。足元のドル円は介入前の水準にほぼ戻っているが、この間に米金利が大きく上昇しているため、本来は一時1ドル150円を突破していてもおかしくなかった。145円台で再介入への警戒感が台頭する結果、円安の進行が抑えられているとみられる。一方で、介入には様々な限界が存在する点には留意が必要だ。一つは「効果の限界」だ。円安の背後にあるファンダメンタルズが変わるわけではないため、介入によって円安トレンドを反転させることは期待できない。次に外貨準備の限界もある。将来にわたり必要であるため、現時点で使い切ってよいわけではないうえ、その多くが米国債であるとみられることも制約になる。また、対米外交面での規模の限界も存在すると思われる。今のところ、米政府は理解を示しているが、大規模介入を続ければ、拒否反応を示す可能性も排除できない。
     
  3. 以上の通り、介入にはドル円のトレンドを変えるほどの効果は期待できず、また規模にも限界があると考えられる一方、いずれは米物価の鈍化が明確になったり、米利上げやドル高による米経済への悪影響が深刻化したりすることで、ドル安圧力が高まることが想定される。従って、今後のドル円を巡る構図は、「介入の限界」と「円安ドル高圧力の後退」との攻防になりそうだ。「介入の限界感が高まらず、効果が続いて時間を稼いでいるうちに、ドル高圧力が後退する場合」には、円安進行がある程度抑制されるうえ、ドル高圧力が後退するにつれて円安が是正されていくことになる。逆に、「介入の限界感が高まったり、米物価の高止まりなどを受けてドル高圧力がさらに強まったりする場合」には、今後も円安の余地を探る展開となり、大幅な円安が進みかねない。

 
■目次

1. トピック:円買い介入の効果と限界をどう見るか
  ・円買い介入に至った理由
  ・介入の内容
  ・介入の効果は確かに認められる
  ・介入には様々な限界が存在
  ・今後のポイント:介入の限界vs円安ドル高圧力の後退
2. 日銀金融政策(9月)
  ・(日銀)コロナオペの段階的終了を決定
  ・今後の予想
3. 金融市場(9月)の振り返りと予測表
  ・10年国債利回り
  ・ドル円レート
  ・ユーロドルレート

経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志(うえの つよし)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴

・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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