一方、(3)インフレについては、コスト転嫁による住宅価格への上昇圧力が続く見通しだ。コロナ禍ではサプライチェーンの混乱による供給制約が広がり原材料価格が上昇した。例えば、木材先物価格はコロナ禍前の4倍超に高騰し、日本でもいわゆる「ウッドショック」として話題になった。その後、供給制約が解消に向かい原材料価格も落ち着きつつあったが、ロシアによるウクライナ侵攻以降、原油など資源価格が急騰し再びインフレの勢いが増している。また、人件費の上昇圧力も根強い。「The Great Resignation(大離職時代)」と呼ばれるように、米国などではコロナ禍で従業員の退職が増加し、人手不足が深刻化している。企業は、従業員のつなぎ止めや新規採用のため賃金を引き上げており人件費が増加している。インフレの沈静化には時間を要する見込みであり、インフレが住宅価格を下支えする可能性がある。
1 Mondragon, John and Wieland, Johannes, Housing Demand and Remote Work (May 2022). NBER Working Paper No. w30041, Available at SSRN: https://ssrn.com/abstract=411074